【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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Fクラス-14歳-

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一目見ただけで、この人は女子達に騒がれるような存在の人なんだろう、と感じた。

肩をグッと掴まれて振り返らされると、顔を真っ赤にした友人のメイが映った。

「ちょっと!シエルってサオトメ様と知り合いなの!?」
手を添えて小声で聞かれる。

「サオトメ……?」

その名前は聞いた事がある。
下級クラス棟でもかなりの有名で、何度も話題に出てきた人物だ。


確か名家の一人息子で、5歳でこの学園に入り、8歳でこの学園から勝手に出ようとした事でも有名だ。
歳は私より1つ年上だった気がする。

そして、久しぶりに飛び級を出すんじゃないかと騒がれるくらいに、かなりの魔力の持ち主だったはず。
なのに試験当日は体調を崩す事が多く、本当なら卒業してないとおかしいくらいの魔力を持っているのに、まだ卒業してないんだとか。

上級クラスと建物も違うというのもあって、うわさでは何度も耳にしていたけど、初めて実物を見た。

女子が騒ぐのもうなづける美貌だわ。



「余計なお世話だったかな」
申し訳なさそうな尊顔に、思わずブンブンと顔を振って否定しながらも、そんな綺麗な目を向けられると勝手にほほに熱を持つ。

「い、いえ。でもこれくらい大丈夫ですので。ありがとうございます」
本が落ちないように気を付けながら小さく頭を下げて通り過ぎようとすると、本のタワーに手を添えられた。
その事に驚くと、そっと肩を掴まれ目を向ける。
すると、私に合わせて少しかがむサオトメさんの尊顔が間近に見えて、心臓が跳ねた。

「遠慮しているだけなら手伝わせて欲しいな。女の子がこんな重そうなのを持って歩くなんて、ほっとけなくって」

ひぇ~!!
顔が良いだけじゃなく中身まで良いだなんて!!完璧?!

「でも、女子寮まで遠……」
断ろうとした私の口はメイの手に塞がれてしまう。
その事に目をパチクリさせると、メイがささやいて来た。

「いいじゃない!せっかくこんなに親切に言ってくれてるんだし。仲良くなれる絶好のチャンスよ!寮まで結構距離もあるんだし持ってもらいなよ!」

確かに、ここから寮まで結構な距離がある。
正直、この量の本を持って帰宅したら、明日は腕が上がらないだろう。

でも、友人でもない人にこんな重い本を持って貰うなんて、かなり気が引けてしまう。

あと、こんなに綺麗な男の子が近くに居るなんて、落ち着かないし……(ここが最重要!!)。


「私の為と思ってOKしてよぉ。私、一度話してみたかったの」
メイにお願いされると、断れるものも断れない。
まぁいいか、そこまで言うのなら。メイもいるし。

「すみません。じゃあお言葉に甘えて……何冊かお願い出来ますか?」
私の言葉にメイがガッツポーズをした、その時――

「Dクラス、マジマ・メイさん、Dクラス~マジマ・メイさん。至急講師室まで来てください」
と園内放送が流れた。
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