31 / 395
Gクラス-9歳-
2
しおりを挟む
その瞬間、ガタッと椅子を鳴らして席を勢いよく立ち上がって、椅子が倒れた。
「タチバナさん……?どうされたんですか?」
私は、今の状況を講師が理解するより先に、そのまま教室を飛び出した。
風を切るように階段を駆け降りて上靴のまま校舎から飛び出し、門に向かって全力疾走した。
そして見えて来たのは管理事務局員数名と――私の両親。
やっぱり……
見間違いじゃなかった……
「パパ!ママ!!」
私の声に反応した両親は振り返り、目を丸くして私の名を叫ぶ。
「シエル!!」
久しぶりの声とその姿に、走りながらジワりと涙が滲み出す。
「止まりなさい!」
そう言う管理事務員を無視して両親の元へ駆け寄ろうとすると……
「キャッ」
ブワっと向かい風が吹いて思わず足が止まった。
顔の前で手をクロスにした私がそっと目を開けると、管理事務員は鋭い目で忠告した。
「タチバナさん駄目ですよ。それ以上近付くと法を犯すことになりますので。タチバナさんのご両親も、すぐにこの場所から立ち去ってください。さもないと……」
管理事務員は手の先から威嚇するようにピッと魔法のステッキを出す。
「裁かなければいけなくなりますので」
これは冗談なんかじゃない。本気だ。
授業でも国の決まりに歯向かった人がどうなったのかを叩きこむように教えられて来た。
最悪、私が罰を受けても塔に入ってもいい。
でも両親が罰を受けるなんて、耐えられない!
「パパ、ママ、誤解してるよ!パパとママと離れて淋しいけど、私、ここで楽しくやってるよ?早く卒業出来るように頑張るから、そしたら一緒にまた住もう。だから……だから……心配しないで……」
本当は触れたい、またあの温かい手で握ってほしい。抱きしめてもらいたい。
そんな気持ちをグッと抑えて、出かけた涙を飲んで作り笑いを浮かべた。
両親がここに来たのは、私を学園から取り返そうとしての事だろう。
でも、そんなの不可能だって身に染みている。
魔法が使えない人間が、魔法を使える人間に勝てるわけがないのだから。
「シエルは全く分かってない!!手紙にも書いたけど、この学園は表向きは魔法使いを育てる学校で、本来の目的は……っ、ぐぅあ!!」
話している最中に背後にいた管理事務員にステッキが突きつけられたお父さんは、そのまま地面にひれ伏すように倒れた。
その様子に、サーっと血の気が引いていく。
「キ…………、キャァァァーーーー!!お父さん!!お父さん!!」
「タチバナさん……?どうされたんですか?」
私は、今の状況を講師が理解するより先に、そのまま教室を飛び出した。
風を切るように階段を駆け降りて上靴のまま校舎から飛び出し、門に向かって全力疾走した。
そして見えて来たのは管理事務局員数名と――私の両親。
やっぱり……
見間違いじゃなかった……
「パパ!ママ!!」
私の声に反応した両親は振り返り、目を丸くして私の名を叫ぶ。
「シエル!!」
久しぶりの声とその姿に、走りながらジワりと涙が滲み出す。
「止まりなさい!」
そう言う管理事務員を無視して両親の元へ駆け寄ろうとすると……
「キャッ」
ブワっと向かい風が吹いて思わず足が止まった。
顔の前で手をクロスにした私がそっと目を開けると、管理事務員は鋭い目で忠告した。
「タチバナさん駄目ですよ。それ以上近付くと法を犯すことになりますので。タチバナさんのご両親も、すぐにこの場所から立ち去ってください。さもないと……」
管理事務員は手の先から威嚇するようにピッと魔法のステッキを出す。
「裁かなければいけなくなりますので」
これは冗談なんかじゃない。本気だ。
授業でも国の決まりに歯向かった人がどうなったのかを叩きこむように教えられて来た。
最悪、私が罰を受けても塔に入ってもいい。
でも両親が罰を受けるなんて、耐えられない!
「パパ、ママ、誤解してるよ!パパとママと離れて淋しいけど、私、ここで楽しくやってるよ?早く卒業出来るように頑張るから、そしたら一緒にまた住もう。だから……だから……心配しないで……」
本当は触れたい、またあの温かい手で握ってほしい。抱きしめてもらいたい。
そんな気持ちをグッと抑えて、出かけた涙を飲んで作り笑いを浮かべた。
両親がここに来たのは、私を学園から取り返そうとしての事だろう。
でも、そんなの不可能だって身に染みている。
魔法が使えない人間が、魔法を使える人間に勝てるわけがないのだから。
「シエルは全く分かってない!!手紙にも書いたけど、この学園は表向きは魔法使いを育てる学校で、本来の目的は……っ、ぐぅあ!!」
話している最中に背後にいた管理事務員にステッキが突きつけられたお父さんは、そのまま地面にひれ伏すように倒れた。
その様子に、サーっと血の気が引いていく。
「キ…………、キャァァァーーーー!!お父さん!!お父さん!!」
5
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる