【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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Gクラス-9歳-

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その瞬間、ガタッと椅子を鳴らして席を勢いよく立ち上がって、椅子が倒れた。

「タチバナさん……?どうされたんですか?」

私は、今の状況を講師が理解するより先に、そのまま教室を飛び出した。

風を切るように階段を駆け降りて上靴のまま校舎から飛び出し、門に向かって全力疾走した。


そして見えて来たのは管理事務局員数名と――私の両親。


やっぱり……
見間違いじゃなかった……


「パパ!ママ!!」
私の声に反応した両親は振り返り、目を丸くして私の名を叫ぶ。

「シエル!!」
久しぶりの声とその姿に、走りながらジワりと涙がにじみ出す。

「止まりなさい!」
そう言う管理事務員を無視して両親の元へ駆け寄ろうとすると……

「キャッ」
ブワっと向かい風が吹いて思わず足が止まった。
顔の前で手をクロスにした私がそっと目を開けると、管理事務員は鋭い目で忠告した。

「タチバナさん駄目ですよ。それ以上近付くと法を犯すことになりますので。タチバナさんのご両親も、すぐにこの場所から立ち去ってください。さもないと……」


管理事務員は手の先から威嚇いかくするようにピッと魔法のステッキを出す。
「裁かなければいけなくなりますので」

これは冗談なんかじゃない。本気だ。
授業でも国の決まりに歯向かった人がどうなったのかを叩きこむように教えられて来た。

最悪、私が罰を受けても塔に入ってもいい。
でも両親が罰を受けるなんて、耐えられない!


「パパ、ママ、誤解してるよ!パパとママと離れて淋しいけど、私、ここで楽しくやってるよ?早く卒業出来るように頑張るから、そしたら一緒にまた住もう。だから……だから……心配しないで……」
本当は触れたい、またあの温かい手で握ってほしい。抱きしめてもらいたい。
そんな気持ちをグッと抑えて、出かけた涙を飲んで作り笑いを浮かべた。


両親がここに来たのは、私を学園から取り返そうとしての事だろう。
でも、そんなの不可能だって身に染みている。
魔法が使えない人間が、魔法を使える人間に勝てるわけがないのだから。


「シエルは全く分かってない!!手紙にも書いたけど、この学園は表向きは魔法使いを育てる学校で、本来の目的は……っ、ぐぅあ!!」

話している最中に背後にいた管理事務員にステッキが突きつけられたお父さんは、そのまま地面にひれ伏すように倒れた。


その様子に、サーっと血の気が引いていく。
「キ…………、キャァァァーーーー!!お父さん!!お父さん!!」
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