30 / 367
Gクラス-9歳-
1
しおりを挟む優しい陽射しが差し込む教室――
「初めて魔力というものを発見した人物は……。
魔力が高ければ高い程、寿命は延びます。記録の中にある一番長く生きた魔法使いは812歳で……今現在生存している中では……」
ここに来て、もう4年も経った。
先生が教科書を読み上げている中、私は来月にある5回目の進級試験の事で頭がいっぱいになっていた。
これまでの4回の試験結果は、2回合格、1回不合格、そして1回は不戦敗だった。
Fクラスまでは誰も落ちないと言われている試験に、私は一度落ちている。
進級が本当に難しくなるのは、EクラスやDクラス辺りからだと言われているのに、私はもう既に苦戦していた。
その事実に自信を無くし、次こそは失敗出来ないと、不安に押しつぶされそうになる。
ちなみに不戦敗の理由は謹慎処分だ。
卒業を待っているだけではいられなくなり、脱園を試みたのがバレたのだ。
例えば、学食のスプーンで地道に地下を掘ろうとしたり(途中で硬い壁に阻まれた)、壁をよじ登って逃げようとしたり(すぐに警報が鳴って逃げ出した)、熱がある時に頭がおかしくなったフリをして唯一の出口と判断した門から出ようとしたり(すぐに管理事務局員に捕まって3か月の謹慎処分を受けた)。
そのせいで謹慎になって試験を受けれなかったのだ。
得られるものもなく、ただだだ撃沈されただけ……。
もう他に脱園出来る方法は、瞬間移動くらいしか思いかない。
噂では、瞬間移動はSクラスになったら極秘に教えられるらしい。
でもSクラスになったら、もう卒業が目前なんだから、わざわざ危険を冒して脱園しなくてもいい気がする。下手にバレて謹慎になったら、また不戦敗になってしまうし。
というか……まず私、Sクラスまで行けるのかな?
このままだと下手したら永遠にSクラスにならずに人生が終わる可能性もある。
なぜかというと、私はこの学園始まって以来、魔力が最弱だと言われているからだ。
あくまでも噂だけどね。
でも、その噂のせいで最近知らない人にまで馬鹿にされるようになって来て、ちょっと辛い。いや、結構辛い。
あぁー、やっぱ私の人生、前世も含めて上手くいかない。
なんでこんなに魔力は少ないの?
何か、人生ごと呪われてるんじゃないの?
「はぁ……」
愛してくれた両親に会いたいのに会えないし、復讐についても生まれた時から全く進歩なし。もう生まれ変わって9年も経ったのに。
もう、その事にため息しか出ない。
その時、窓の外から微かに騒がしい声が聞こえて目をやった。
すると学園の門に、学園の講師か管理事務局の人っぽい恰好をした人が何人か立っていて、何かもめているようだった。
「ねぇ、なんかあそこでトラブってない?」
前の席のクラスメイトが振り返り話しかけて来る。
「ねっ。私も思ってた」
「あんな所でモメてるとか珍しいよね。しかも門が開いてるし」
という会話中に再び門に目を向けると、管理事務局の人たちの影から中年の男女が見えた。
その姿はとても小さいのに、瞬時に懐かしさを覚えた。
一瞬で高鳴る心臓。
呼吸のリズムが乱れる。
「お父さん、お母さん……?」
5
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる