【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

国立日本魔法学園入学

5

「あ…………あの、私……」

やっと本来の目的を思い出した私は道を聞こうとした。
でもその前に、目の前の男性は横になったまま口に手も当てずに大きなあくびをした。
「ふぁ～」

せ、せっかくの美形が……。
見た目が良すぎるだけに、そのあくびは頂けないと残念な気持ちになっていると、「なんだよ。クソガキ、勝手に入ってくんな」と口悪く言われてショックで石のようになってしまう。

「クッ、クソガキじゃないわ！」
口を膨らませて返すと、
「はいはい。ガキは馬鹿だから皆そう言うんだよ」
と、再び大きなあくびをしながら言われ、底知れぬ怒りが湧き上がってくる。

「馬バっ……！？私、馬鹿なんかじゃない！なんなのあんた！初対面なのに流石に酷ひどいんじゃないの！？」

なんてムカつくやつ！
一瞬でも見とれていた自分を今すぐ呪いたいくらいだわ！


「るせぇな。眠ぃからさっさと出てけ」
「えっ、待って、私……」
男性が指を私に指を向けてクルっと円を描いたと思うと、私の足は勝手に回れ右をした。

「えっ！？……あ、あれ！？」

自分の足なのに、まるで他人の足にすり替わったみたいに言うことを聞かず、慌てふためく。

「な、なにこれ！？どうなてるの！？あっ足が勝手に……」
驚いている間に勝手に歩き出した足のせいで廊下に出てしまう。

直後、背中側にあった扉が勢いよく閉まって、小さな風が吹いた。

扉の閉まる大きな音にビクっと小さく飛び上がってから気付いた。
「あ……あれ？」
さっきまで思うように動かせなかった体が、今は嘘みたいに動かせるようになっているという事に。


念のため、手のひらをグーにしてみる。
「動く……」

まさかこれも魔法？
魔法って、こんな事まで出来るの？
それって凄すぎない？

私も魔法をマスターしたら、すぐにこの学園から出れるんじゃないの？