【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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国立日本魔法学園入学

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…………

……

「つ、疲れた……」

慣れない環境だからか、大した授業じゃなかったのにひど疲労感ひろうかんを感じる。

「早く自分の部屋に戻りたい」
そう思うのに……

「いくら歩いても女子寮に着かないんですけど!?ここ何処どこぉ~~!!」
廊下で叫んでみるも、返って来るのはやまびこのような自分の声だけ。

気を取り直して、もう一度、「にゅうがくのてびき」にあった園内マップに目をやる。
でも、今自分がどこにいるのかサッパリ分からない。(前世も方向音痴な人)

「こんな事ならトイレなんて我慢して、授業が終わった時に皆と一緒に帰ればよかった」
って、そんなの今さら後悔しても遅い。

せめて講師とか生徒が歩いていたら聞けるのに誰ともすれ違わないし……と、口をとがらせながら地図を何度もグルグルと回してみる。

「まず渡り廊下を探さないと。マップの通りだとこの辺りにあるはずなんだけど……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、渡り廊下があるはずの場所にあったドアを開けた。

すると、社長室とかに使われそうな位に大きく立派な机とその手前に長いソファ、そしてフラスコとかビーカーか薬のようなものが入った瓶が棚が並んでいるような部屋が顔を出した。


なんか、理科室っぽい。
でも大きさ的に教室ではないのは一目瞭然いちもくりょうぜん

探検するような気持ちで部屋に足を踏み入れると――


「誰だ」
誰も居ないはずのこの部屋に野太い声が響いた。

「え?」
驚いて慌てて辺りを見回すも、どこにも誰もいない……

と思っていたら、突然ソファの上に光の粒がまとい始め、何もなかった所からソファで横になっているような人の形が半透明で現れた。

初めは輪郭りんかくだけだったけど、すぐにその形は鮮明になり、白銀に輝く髪の男性が現れた。

白銀髪の男性は、周囲に薄っすらとした光を放ちながらこちらに目を向けてくる。

目が合った瞬間、突然なにもない所から人間が現れたことよりも、その美しさに驚かされた。
その美しさは、この世のものではないかのように感じられた。

「……っ」

非の打ち所がない程に整った顔立ちの男性に、神々しささえ感じ、思わず釘付けになってしまう。

サファイヤのようなあおく輝く目を持つこの男性は、眩しいほどの白銀の前髪をさらりと揺らし、切れ長の目でじっと私を見つめていた。

その視線だけで心臓が早鐘を打ち、思わず胸元に手を置いた。
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