【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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国立日本魔法学園入学

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「はい」
「私はこのクラスの講師よ。よろしくね」
「はい……よろしくお願いします」
そう言ってペコっと頭を下げる。

「あらあら。お利口さんね。でもちょっと待ってね。みんなに紹介する前に、ちょっと暑いから窓開けるわね」
講師は額の汗をぬぐってから窓側に向かって指をスライドした。
すると閉まっていた窓が次々と開いて行き、心地の良い風が頬や髪の間に通り抜けた。

「うーん、いい風。よし!じゃあこっちに来て」
と講師は私の手を握り、教卓まで誘導した。

「はい!みんな聞いてください。新しいお友達を紹介するわよ!昨日入学したタチバナ・シエルちゃんです。みんな仲良くしてくださいねぇ~」

教卓に立つ先生らしい人がそう言うと、黒板にサッと手をかざした。
すると黒板に『タチバナ・シエル』と言う文字が浮かび上がって来て、目を大きくした。一晩明けても魔法には慣れない。

「タ……タチバナ・シエル、5歳です。よろしくお願いします」

「あら~、ちゃんと挨拶あいさつ出来て偉いわね」
中身はいい大人なのに挨拶ごときで拍手されて、なんとも複雑な気持ちで頬を染める。


その時、突然入ってきた泣き声に目を向けると、水たまりの中で涙をこぼす3歳くらいの子供が映った。

「ふえぇ~ん!」
「あら~。またおもらししちゃったの?」
後ろから講師ではない大人がその子の元に駆け付ける。
ふと教室の後ろを見ると、授業参観のように大人がズラリと並んでいた。

一瞬なんなのかと思ったけど、これがクリフオジサンが言っていた『世話役』の人達なんだろうと、駆け付けた人の様子を見て理解した。

椅子も豆椅子や地べたに座る子供たちばかりで、この光景はまるで幼稚園か保育園みたいだ。

「シエルちゃん。席は決まってないから、好きな所に座ってねぇ」
「はい」
一番近くの椅子に座ると、ピューっと椅子から笛の音が鳴って、その音と共に体の中の力が抜けていくのを感じた。

「はい!では皆さんには既に説明していますが、新しいお友達の為にも久しぶりにおさらいしましょうね~」
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