【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

国立日本魔法学園入学

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翌朝――

この部屋に管理事務局の人が来て、あずき色の縁ふち取りのある黒いローブと、あずき色のセーラー服っぽいものを置いて行った。

「可愛い」
さっそく着替えて、部屋にある細長い姿見の前に立ってみる。
斜めになっていたリボンの位置を整えて、軽くポージングをしてみる。


5年経っても、まだ自分が生まれ変わったって事が信じられない。

クリっとした大きな目に小さな鼻、愛らしいぷるんとした唇。
そして意外と可愛いこの制服。
「結構いいかも」
……なんて。


一瞬浮かれてしまった自分が嫌になる。
お父さんとお母さんには連絡しておくって丸眼鏡が言ってたけど、心配してるだろうな……。

両親の状況を考えると胸が痛んだ。


鏡に映る自分は、先ほどとは違って不必要に眉が寄っていた。

魔法がある世界だっていうのはやっぱり信じられないけど、認めざるを得ないのかもしれない。

両親の言う『悪い人』は管理事務局の人達だったのかな？

出生届まで出さずにあの部屋に私を監禁して……そこまでして私を手放したくなかった？だって卒業まで最短10年だもんね。
溺愛できあいしてくるあの両親の事だから考えられなくもない。
愛していたからこそ離れたくなかった……とかなのかな？

じゃあ、よく言われていた『長生きして』は、なんだったんだろう。

この学園に入ったら死ぬ？

でも、昨日見た生徒の顔は、死と隣り合わせにあるような顔はしてなかった。

「うーん……全く分からない」


…………

……

クリフオジサンに連れられて、割り当てられたクラスの教室前に立つと、ドア越しに子供の声が聞こえて来た。

「ほら、入って」
ドアを開けたクリフオジサンにトンと背中を押されて、つまづきそうになって教室に入る。
すると、私の目に私と同い年くらいの小さな子供たちが大勢映った。

「あらあら、大丈夫？あなたが昨日入園したシエルちゃんね」
保母さんみたいに優しく微笑む中年女性は、教卓のような所から私の元に歩み寄って来くる。