【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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その時、耳を塞ぎたくなるような悲鳴が私の耳に飛び込んで来た。
「シエル!!シエル――!!」

男性に引き止められながらも必死に私に手を伸ばすお母さんがコスプレ男の合間に見えた。

その様子はまるで、永遠の別れのようにしか見えない。
こんなのただ事ではないと足がすくんだ。


ずっと平和だったのに……

もしかして、この人達がお母さん達の言う『悪い人』なの?

私が6歳までちゃんと待てずに家から出てしまったから、こんな事になってしまったの?


ただの過保護だと思って、信じてなくてごめんなさい。
せっかく愛してくれたのに、台無しにしてごめんなさい。

「お母さん……ごめんなさい……」

ぼろっと涙が零れると、そばにいた男の手を全力で振り払った。
「うおっ!ビックリした!」

そしてお母さんの元に駆け寄ってお母さんが伸ばす手に向かって限界まで手を伸ばした。
「おい!待て!」

「お母さーーん!!」

すると次の瞬間――


目の前の景色がお母さんの手から、水平線がハッキリと見える広大な景色に変わった。

「……えっ?」

何?ここ……。

視界が、高い……?
いや、高いとかいうか…………そんなレベルじゃない。
雲が下に広がってる……!?

この景色は、テレビでしか見たことがないけど、まるで飛行機とかで見るような景色だと思った。


どうしてこんな景色を見さされているのか、と思いながらも視線を下げる。

すると、地面もないのに落下するわけでもなく浮いている自分の足があって、大きく息を飲んだ。

よく見ると、この足元よりかなり下の方に小さな小さな建物がジオラマのよう並んでいて、ついに我慢が出来ず、どこまでも続きそうな空に叫んだ。

「キ……キャーーーーーー!!」
足の震えが止まらない。

「あ、まーた間違えちまった」
背中側から余裕のある声が落ちてきて振り返ると、ダルそうに頭をくあのコスプレ男が後ろにいた。

状況を把握しようと自分の体を確認すると、腹部に大きな腕が見えた。
そこで少しだけ理解ができた。
私は今後ろに居るコスプレ男に片手で抱えられて浮いている(?)んだって。

いやいや。
でも浮いてるって……。どういう現象で?
非科学的すぎて否定したいのに、何度足元を見ても種も仕掛けも見つかりそうにない。

「お、お、お……落ち、落ちる……」
「落ちないし」

この人が人さらいの『悪い人』とだと分かっていても、こんな高い所から落下するなんてあまりにも恐ろしい。
スカイダイビングを楽しめる人達に敬意けいいを払いながら、ガタガタと震える手で自分の腹部にある腕にしがみついた。

すると、
「なんだよ。おんぶの方が良いか?」
と言って、こんなバカ高い場所で体勢を変えようとするから大慌てで止める。
「だっ、大丈夫です!い、い、今のままで……大丈夫ですから!」
だからもう動かないで!お願い!



その時、風がほほを通り抜けて私の髪をふわりと揺した。
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