【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

文字の大きさ
上 下
16 / 395
1000~2000人に1人の存在

1

しおりを挟む

なんとかくらむ目で薄くまぶたを開けると、驚く事に、この狭い玄関で大の大人がひしめき合うように何人も立っていた。

見たこともないこの大人達は黒っぽいポンチョ……と言うか魔法使いのローブにも見えるコスプレのような服を着ている。

その大人たちの真ん中にいる眼鏡メガネをかけている男性は、赤紫のロングヘアをしているから、怪しい以外の何者でもない。


「だ……誰ですか?」
罪人でも見るかのような目で私を見下ろす大人達に恐る恐る聞く。


この狭い家で過ごす5年の歳月はあまりにも長くて、実はこの世界はお父さんとお母さんと自分の3人しか存在しないんじゃないかって思ってしまう程だった。

だから、生まれ変わって初めて見た両親以外の人間に……内心驚いた。


「はい。この子ですね」
一昔前のラジオみたいな機械を手にする男性がそう答えると、赤紫ヘアで丸い眼鏡を掛けた男性が人差し指をピッと立てて言う。

「すぐに連れて行け」
「え……」

その時、玄関の向こう側からバタバタと大きな足音が聞こえて来て「離して!お願いします!」と、お母さんの声が飛び込んで来た。
でも、コスプレ集団が玄関でひしめき合っているせいで姿は見えない。

「シエルを連れてかないでください!……お願いします!なんでもしますから!!お願いします!!」

連れていかないで……?って?
何か分からないけど、お母さんの悲痛な叫びを聞いて、今とても良くない事が起こっている事だけは分かった。

嫌な予感に、尻もちをつたまま、すぐそこの寝室まで後ずさる。

すると丸い眼鏡の男の後ろにいた男性が、土足のまま家に上がって来て私の目の前で立ち止まった。

「悪いな」
そう言うと、驚いて声も出ない私の腕を掴んで立ち上がらせた。

「おい、早くいくぞ」
丸い眼鏡にあごで指された私の後ろの男は、「はい」と返事をする。

どこかに連れて行かれるという危機感に、ようやく奮い立たすようにして声を出した。

「は……離して」
でも、自分の声は弱々しく震えていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...