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1000~2000人に1人の存在
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しおりを挟むなんとか眩む目で薄く瞼を開けると、驚く事に、この狭い玄関で大の大人がひしめき合うように何人も立っていた。
見たこともないこの大人達は黒っぽいポンチョ……と言うか魔法使いのローブにも見えるコスプレのような服を着ている。
その大人たちの真ん中にいる眼鏡をかけている男性は、赤紫のロングヘアをしているから、怪しい以外の何者でもない。
「だ……誰ですか?」
罪人でも見るかのような目で私を見下ろす大人達に恐る恐る聞く。
この狭い家で過ごす5年の歳月はあまりにも長くて、実はこの世界はお父さんとお母さんと自分の3人しか存在しないんじゃないかって思ってしまう程だった。
だから、生まれ変わって初めて見た両親以外の人間に……内心驚いた。
「はい。この子ですね」
一昔前のラジオみたいな機械を手にする男性がそう答えると、赤紫ヘアで丸い眼鏡を掛けた男性が人差し指をピッと立てて言う。
「すぐに連れて行け」
「え……」
その時、玄関の向こう側からバタバタと大きな足音が聞こえて来て「離して!お願いします!」と、お母さんの声が飛び込んで来た。
でも、コスプレ集団が玄関でひしめき合っているせいで姿は見えない。
「シエルを連れてかないでください!……お願いします!なんでもしますから!!お願いします!!」
連れていかないで……?って?
何か分からないけど、お母さんの悲痛な叫びを聞いて、今とても良くない事が起こっている事だけは分かった。
嫌な予感に、尻もちをつたまま、すぐそこの寝室まで後ずさる。
すると丸い眼鏡の男の後ろにいた男性が、土足のまま家に上がって来て私の目の前で立ち止まった。
「悪いな」
そう言うと、驚いて声も出ない私の腕を掴んで立ち上がらせた。
「おい、早くいくぞ」
丸い眼鏡に顎で指された私の後ろの男は、「はい」と返事をする。
どこかに連れて行かれるという危機感に、ようやく奮い立たすようにして声を出した。
「は……離して」
でも、自分の声は弱々しく震えていた。
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