【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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どうして私たちの子供ばかり

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数日後――
不思議な事が起こった。

冬なのに手が異様に温かく感じて、ふと見た手のひらには、小さなお星様が飛んでいてキラキラと輝いていた。
「……わぁ……」

これが静電気なのか、なんの現象なのかは分からないけど、子供用の絵本も読み飽き、パズルもやりつくして毎日が暇で暇で仕方なかった私は、その事に一気にテンションが上がった。
だからキッチンに立つお父さんの所に大急ぎで向かって手のひらを見せた。

「パパーー!見てぇーー!!何か光ってる!」
するとお父さんは一気に目を丸くして叫んだ。

「え、え!?ど、どうして!?止めなさい!!今すぐに!!」
お父さんに怒鳴どなられた事なんて一度も無くて、一瞬で肩がすくんだ。

「え……と、と、止めるって……な、何を?」
自分の口から弱々しい声が出る。

「いいから!止めるんだ!」
「え……っ?ど、どう……」

止めろと言われても、何を止めるのか、どうやって止めるのかも分からず、私はあたふたするだけ。

するとお父さんは観音袋の尾が切れたかのように、「早く!!」と私の手のひらを掴んだ。

その瞬間「熱っ!」と叫んで、即座に手を離したお父さんは慌ててキッチンの蛇口をひねって水で手を流した。

何をしてるのかサッパリ分からず、水を当てているお父さんの大きな手を覗き込む。
すると真っ赤にただれたお父さんの手が目に飛び込んで来た。

「パパ……なんで……、手が赤くなってるの……?」


何が起きてるのか分からず混乱する私は、足の裏が床が貼り付いたかのように動けず、脂汗をかきながら痛みに耐えるお父さんを眺めていた。


……なんで?どうしてそんな事になったの?
お父さんはただ私の手を握っただけなのに。

いくら思い返しても全く分からない。

「ごめん……」
全然分からないけど、きっと私のせいのような気がする。

「パパ、ごめんなさい……」
水が流れる音が響くキッチンで、何度も泣いて謝った。

その度に、お父さんはなだめるように言った。
「大丈夫だよ。シエルのせいじゃないから」

その言葉で余計に分からなくなった。

でも、気付けば手のポカポカしたキラキラは無くなっていて、不思議な気持ちでじっと自分の小さな手の平を見た。

「……あれ?」
私は大きく首をひねった。
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