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どうして私たちの子供ばかり
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しおりを挟む「あっ!痛っ……」
突然顔をしかめたお母さんは自分の足先を掴んだ。
なんと、寝室の入り口にあるタンスの端で足の指を打ったようだ。こんなドジなお母さんは初めて見た。
「ママ、大丈夫!?」
立ち上がろうとすると、「大丈夫よ」と顔を歪めながら片足で跳びのままこっちに来る。
なんともギャグっぽい姿なのに、顔は真剣なお母さんに全く笑えない。
私の目の前まで来たお母さんは、しばらくネックレスの石を見てから言った。
「はぁー、凄いわね。本当に手に入れれるなんて……」
「でも凄い額だったよ。もう、まともに食っていくのもキツくなるかも知れないけど、家族3人一緒に居れれるなら俺はもう何もいらないと思ってる」
「あなた……。私もよ。私も頑張って働くから。ありがとう……」
お父さんは、涙ぐんで言うお母さんの手を握った。
「お前……」
何の話をしているのか全く分からない私の前で、お母さんはお父さんにキスをした。
ちょっと……、子供の目の前でまたこの人達は……
仲がいいのは良いけど、見てるこっちも恥ずかしいから見えない所でやってほしい。
照れながら、まだまだ小さな手で目元を覆う。
「いいかい、シエル」
その声に呼ばれて指の隙間から見ると、もうキスは終わっていたようで、今までに見た事がない位に真剣なお父さんの目がこちらに向いていた。
「2つ、約束して欲しい事があるんだ」
「約束?」
「この約束を守ってくれないと、このネックレスはシエルをちゃんと守れなくなるかもしれないんだ」
眉をぐっと寄せるお父さんは、私の細い二の腕をグッと掴んでくる。
「そ……そうなの?」
「そうだよ。だから今から言う事を絶対守ってほしい」
「う……うん」
身の入っていない返事をすると、お父さんは私の目の前で人差し指を立てた。
「1つ目はね、このネックレスを肌身離さず付けている事。
お風呂に入る時も寝る時も絶対に外しちゃ駄目だよ」
「えっ!?……寝る時も?首、しまらない?」
「大丈夫だよ。寝てる時も守ってほしいからね」
両親はもしかして、なんか変な神様でも崇めてるんだろうか。
「何から?」
「ん?」
「何から守ってくれるの?」
「うーん……悪い奴ら、からだよ」
「悪い……奴ら……?」
すると、すっとお母さんが間に入ってくる。
「そうよ。外は悪い大人が沢山いるのよ。シエルはまだ知らないけど、外は本当に危険がいっぱいだから……」
笑ってるのに泣いてるような顔をして言うその言葉に、よく分からないけどやっぱり胸が苦しくなる。
「2つ目はね、これからはパパやママ以外の人と会うことも出てくるかもしれない」
お父さんは私がずっと手にしていた石を取ると、ポンッと襟ぐりから私の服の中に入れた。
「だから、外ではこんな風にお守りのネックレスが見えないように、ちゃんと隠す事」
「え?隠すの?」
「そうだよ。仲のいい友達が出来ても、絶対にこのネックレスの事を話しちゃ駄目だよ。付けてる事がバレたら意味がなくなっちゃうお守りだからね」
約束の理由がサッパリ理解出来なかったけど、話の感じからして、その約束を守れば外に出られるのかもしれないと思って、私は迷わず頷いた。
この約束が――
この後の私の人生を大きく狂わすなんて……この時は両親でさえも知らない。
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