【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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どうして私たちの子供ばかり

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部屋の壁紙が何か所かがれている。
それに一部、焦げたような……溶けたような所もある。昨夜までは絶対無かったのに。

やっぱり、今朝のあの光景は夢じゃない?

もしあれが現実だったとしたら、なんであんな荒れた部屋になったの?喧嘩けんかとかそんな様子じゃなかったし……。

この事は聞いていい事なのかな?
でも、お母さんは隠したそうだし……



上手く働かない頭でそんな事を考えていた時、バンッ!と玄関のドアが勢いよく開いて体が小さく飛び上がった。

「手に入れたぞ!」
帰宅して来たお父さんは、家中に響き渡る程の大声を上げて家の中に入って来た。

いつも帰宅後は、すぐに手洗いうがいをするお父さんなのに、今日は手も洗わずに真っすぐ寝室にいる私の元に駆け寄って来る。


「あれ?今日パパ仕事は?」
私の前にひざをついてしゃがみ込むお父さんは肩で息をしている。
走って帰って来たんだろうか。

「あぁ、ちょっとな」
そう言うと、お父さんはポケットからすぐに青く輝く石の付いたネックレスを取り出した。

「パパ、それ何?」


「これは、シエルを守るお守りのようなものだよ」
「お守り……?」
首を傾げると、お父さんはニコっと笑って、ネックレスを私の頭頂部からくぐらせて首に下げた。

大人用なのか、チェーンの長さは合っていなく、石はみぞおちあたりでぶら下がっている。

私はその石を持ち上げて目の前に持って来て見詰める。
ラピスラズリのような深い青い石は、この薄暗い部屋でも綺麗に光輝いていた。

「綺麗……」

形はシンプルな楕円形だえんけいで、触るとツルっとしていて手触りも良い。

お父さんは一安心したような顔でため息まじりに呟いた。
「気に入った?」
「うん」
「よかった」

「まさか……、それって言ってた物……?」
豆鉄砲でもくらったような顔のお母さんが、こちらの部屋を覗き込んで聞いて来た。

「そうだよ」
意味深に言ったお父さんの言葉に、お母さんは「信じられない……。正真正銘の……本物なの?」と驚きを隠せない様子でこちらに足を向けた。すると……
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