【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

文字の大きさ
上 下
7 / 395
どうして私たちの子供ばかり

1

しおりを挟む

4歳。
普通ならば幼稚園やら保育園やらに行ってる年齢だ。

義務教育はまだだから、どこにも通っていない子も中にはいるだろう。
でも、この年まで一歩も家から出たことが無い子供は、そうそう居ないはずだ。


「はっぴばーすでーとぅーゆー♪はっぴばーすでーとぅーゆー♪」

お父さんが選んだピンクのプリンセスドレスに着替え、頭に4という数字が乗ったティアラを付けた私は、今の状況にひどい不信感をつのらせながらロウソクを吹き消した。

拍手されて、今世で初めての嘘の笑顔を作った。

ケーキを食べて、プレゼントを貰って……
喜ぶ両親の顔を見ながらも……
駄目だ……なんか、上手く笑えない。

前世の私は作り笑顔が上手かったのに、甘やかされている間に下手になってしまったようだ。

……いや、違う。

私は本気で作り笑顔なんて作っていないんだろう。
本当は言いたいことがあるって、両親に気付いて欲しい気持ちが知らず知らずにあらわれているような気がする。

「どうしたの?誕生日なのに元気ないわね。どこかしんどいの?」
そう聞かれて、やっぱり内心喜んでしまった。
でも、いざ聞こうとすると本当に聞いていいのかためらってしまう。


でも多分、きっと話せば分かる。

唇同士をグッと合わせてから口を開く。
「パパ、ママ……あのね……」

だって、今世の両親は私の事をこんなにも愛してくれているんだから。
だからもう聞いてくれるよね。私のお願い。


「もしかして、好きなプレゼントじゃ無かったかい?」
その言葉にぶんぶんと首を振る。

「ううん。とっても可愛くて嬉しいよ……」
「じゃあ、ケーキが好きじゃなかったのかい?シエルが大好きな苺がいっぱい乗ったケーキにしたんだよ」
その言葉にも首を振る。

「そんなんじゃないの……私……」
しばらく待ってくれていたのに、なかなか言い出せない私に、両親の心配そうな顔が向く。

「ゆっくりで良いのよ。何があったのか教えてくれる?こんな素敵な日にそんな顔してたら、ママもパパもすごく心配だから」

そんな優しい声と、肩に置かれた暖かなお母さんの手に後押しされた気がした。
私は、ひざの上にある小さな手をギュッと握って、決心を固めた。

「私……私……」
「うん」
両親からの穏やかな声が落ちてくると、力を入れていた手に、両親の温かな手が添えられ、勇気が沸いた。

「私……いつまでこの部屋だけなの?」
私の言葉を聞いた両親は、笑顔がスッと消えて見た事の無い顔のまま固まった。

明らかに曇った両親の顔に、心臓が嫌な音を立てた。
こんな両親の顔を初めて見た。

きっと、このまま続けちゃ駄目なんだろう。
そう思って身を引こうとした自分を、力の限り押しのける。

前世の両親の記憶が残ってるせいで、親に歯向かったり、機嫌を損ねそうな事はまだ怖くて上手く出来ない。
でも、今ここで頑張らないと、こんな顔をした両親を思い出して、きっと一生聞けない気がする。
そんな思いを胸に、もう一度口を開けた。

「私も、パパやママみたいに、お外に出てみたい!私だけ出れないのなんておかしいと思う!」
ふり絞るように言った私の言葉に、両親は眉を寄せて顔を見合わした。
すると、お父さんが予想外の事を口にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...