6 / 395
小さな違和感と初めての愛情
3
しおりを挟む…………
……
「あわあわぁ~ジャー。気持ちいでしゅねぇ~」
お母さんの膝の上で頭を流し終わると、曇った鏡に自分の顔だけがぴょこんと映る。
前から思っていたけど、私、とんでもなく可愛いくない!?
目おっきいし、キラキラしてる!
黒髪黒目で、決して碧眼金髪ではないけど、これは美少女ならぬ美幼女と呼ぶべき顔だわ。
「あーうー」
鏡に手を伸ばすと「自分の姿、気になりまちゅかぁ?」と目を糸みたいにして笑いかけてくる。
相変わらず両親は優しく、いつも笑顔だ。
毎日丁寧に洗濯された清潔で、とてもいい匂いの服を着せてくれる日々。
私が泣いても怒ったりしない。
すっごく幸せ。
復讐なんてしないで、このままずっと両親の近くにいたいって、思ってしまう事は少なくは無い。
こんな素敵なお家に生まれ変わるんだったら、前世の記憶なんて無かったらよかった。
そしたら、こんなに苦しくなる事もなく、ただ幸せに生きれたのに。
でも……、
前世の記憶があるから復讐できるんだ。
まだ調べれないから分からないけど、もしまだ奴が法に罰せられずにいるのなら……罰せれるのは私だけかもしれないんだ!
私を殺しておきながら、なんの罰もなくて過ごされているのだけは絶対に許せないし、許すつもりは無い!
「どうして怒ってるの?泡が目に入っちゃったのかな?」
そう言って濡れたガーゼで目元をそっと拭いてくるお母さんに泣きそうになって、ぐっと涙をこらえた。
早く成長したいけど、やっぱり待ってほしい。
そんな葛藤の日々を過ごしていた時、この家のおかしな点に気付いてしまった。
そのおかしな点というのは――
家にスマホや電話、テレビなど、外から入る情報が一切無い事。
そして私だけが家から一歩も出させてもらえない事だ。
もちろん話せるようになってからは、外に出たいと何度か言った。でも、適当に濁されてしまうだけで叶わなかった。
そして最後は、もうおかしな点というよりも『異様性』と言った方がいいと思う。
それは――
この家の窓から、外が一切見えないということだ。
部屋に窓はあるけど、ほとんど外の明かりが入らず昼でも薄暗い。
窓を開けた先は別の建物の壁か、謎の黒い板が貼られて使っていない窓だけ。
この状況は、私だけを外の世界からあえて遮断しているとしか思えない。
そう言えば検診とか予防接種とかも受けた事もない。
お母さんやお父さんの事を悪く思いたくないけど、これは監禁とか軟禁に入るんじゃないかという思いが頭を過る。
でも、きっとそんなのは全部気のせいに決まってる!
だって、今世の両親は本当に優しいし、私を本当に愛してくれているんだから!
だからきっと幼稚園に行く年になれば、そんな不安を感じた事もあったな、って笑い話になるんだろうと信じてる。
そう思いながら薄暗い部屋で月日を重ね、ついに私は、外の世界を一度も見る事もなく、4歳の誕生日を迎えてしまった。
3
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる