【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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小さな違和感と初めての愛情

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…………

……

「あわあわぁ~ジャー。気持ちいでしゅねぇ~」
お母さんの膝の上で頭を流し終わると、くもった鏡に自分の顔だけがぴょこんと映る。

前から思っていたけど、私、とんでもなく可愛いくない!?
目おっきいし、キラキラしてる!

黒髪黒目で、決して碧眼金髪ではないけど、これは美少女ならぬ美幼女びようじょと呼ぶべき顔だわ。


「あーうー」
鏡に手を伸ばすと「自分の姿、気になりまちゅかぁ?」と目を糸みたいにして笑いかけてくる。

相変わらず両親は優しく、いつも笑顔だ。
毎日丁寧に洗濯された清潔で、とてもいい匂いの服を着せてくれる日々。
私が泣いても怒ったりしない。

すっごく幸せ。


復讐なんてしないで、このままずっと両親の近くにいたいって、思ってしまう事は少なくは無い。

こんな素敵なお家に生まれ変わるんだったら、前世の記憶なんて無かったらよかった。
そしたら、こんなに苦しくなる事もなく、ただ幸せに生きれたのに。

でも……、
前世の記憶があるから復讐できるんだ。

まだ調べれないから分からないけど、もしまだ奴が法に罰せられずにいるのなら……罰せれるのは私だけかもしれないんだ!

私を殺しておきながら、なんの罰もなくて過ごされているのだけは絶対に許せないし、許すつもりは無い!


「どうして怒ってるの?泡が目に入っちゃったのかな?」
そう言ってれたガーゼで目元をそっといてくるお母さんに泣きそうになって、ぐっと涙をこらえた。


早く成長したいけど、やっぱり待ってほしい。

そんな葛藤の日々を過ごしていた時、この家のに気付いてしまった。



そのおかしな点というのは――

家にスマホや電話、テレビなど、外から入る情報が一切無い事。

そして私が家から一歩も出させてもらえない事だ。

もちろん話せるようになってからは、外に出たいと何度か言った。でも、適当ににごされてしまうだけで叶わなかった。


そして最後は、もうおかしな点というよりも『異様性』と言った方がいいと思う。

それは――
この家の窓から、外が一切見えないということだ。


部屋に窓はあるけど、ほとんど外の明かりが入らず昼でも薄暗い。
窓を開けた先は別の建物の壁か、謎の黒い板が貼られて使っていない窓だけ。

この状況は、私だけを外の世界からあえて遮断しゃだんしているとしか思えない。
そう言えば検診とか予防接種とかも受けた事もない。

お母さんやお父さんの事を悪く思いたくないけど、これは監禁とか軟禁に入るんじゃないかという思いが頭をよぎる。


でも、きっとそんなのは全部気のせいに決まってる!

だって、今世の両親は本当に優しいし、私を本当に愛してくれているんだから!

だからきっと幼稚園に行く年になれば、そんな不安を感じた事もあったな、って笑い話になるんだろうと信じてる。



そう思いながら薄暗い部屋で月日を重ね、ついに私は、外の世界を一度も見る事もなく、4の誕生日を迎えてしまった。
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