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犬、やめました。
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しおりを挟む…………
……
嘘みたい。
私の右手の薬指に婚約指輪がはまってるなんて。
カラット数とかの知識は無いし、もし言われたとしてもピンとこないけど、この軽く1cmは超えているダイヤモンドは、絶対一般的なサイズより大きい気がする。
こうやって手を上げて眺めるダイヤモンドは、より一層輝きを増して、つい時を忘れさせられる。
この、一瞬で魅了される程の輝き。
やっぱりオモチャの指輪とは全く別次元⋯⋯つて、比べる対象がおかしいよね。
でも、幼稚舎の時にプロポーズと共にくれたあのオモチャの指輪も凄く嬉しかったな……。
結局、彰が私の為に用意してくれたという事が何より嬉しいんだ。
「まだ見てんのか」
運転席に乗り込んで来た彰が言う。
「うん。だって凄く綺麗だし、嬉しいもん」
ニヤけ顔が止まらない。
「そうか。良かったな」
他人事に言う彰は、手を伸ばしてきて身を乗り出したと思うと助手席側のドアに手をついた。
何かと思って彰を見ると、視界は彰で埋め尽くされて軽く啄むような軽いキスを落として来た。
視界を占めていた彰が離れると首を傾げて言われる。
「で。もうすぐ日付変わりそうなんだけど?」
「……え?」
と言ってから気付いた。
きっとそれは、誕生日プレゼントの催促だろう、と。
「昨日、探すのが間に合わなかったから誕生日にはあげれないって言ったじゃん。ここ数日めちゃくちゃ探し回ったけど、本当にピンとくるのが無くって……」
「なんだよ、本当に無かったのかよ」
と、ムっとした顔の中に残念さが見えて酷く心が痛む。
もしかして、私が嘘をついていて、本当はサプライズ的なものがあるとでも思っていたんだろうか。
もしそうなら、ごめんなさい。
本当に用意してなかったです。
よし、来年はサプライズ作戦にしよう。
「……まぁ日が無かったし、しゃーねぇか。お前と俺じゃ出来が違うからな」
そう言ってこめかみ辺りを指でトントンとされ、瞬時にイラっとする。
「ムカつく」
「本当の事だろ。じゃあプレゼント無い代わりに夜の奉仕を期待してるわ」
「えっ!?夜の奉仕!?」
って、なんですか!?
一体、今夜私は何をさせられるんですか!?
知識の無い頭で思い浮かんだ映像に、顔がぼぼぼと熱くなって頬を手で覆う。
横から感じる視線に振り向くと、今にも笑いだしそうな彰とバチッと目が合った。
笑いながら「期待してるわ」と言われた瞬間、逃げ道を塞がれた気分になったのは言うまでもない。
「じゃあ帰るか。お前、今日も俺んちに泊まるよな」
「うん」
「お前と一緒に居てぇけど、そろそろ一回実家に帰って話した方がいいんじゃねぇか?あっから一度も話してねぇんだろ」
「……うん。そうだよね……」
何度かメッセージを打とうとしては止めて、電話しようとしても出来なかった。
⋯⋯お母さんは私のことを恨んでるかもしれない。
和くんを犯罪者にしてしまったから。
「話しにくいなら俺も着いていくし……ってか、挨拶にも行きてぇし」
挨拶。
婚約するなら必要なんだろうけど……。
あんな事があった後だから彰も会いずらいだろうな。
「……まぁ、無理しなくていい」
彰は車のエンジンを付けて続ける。
「お前のタイミングで…………あれ?なんか落ちてるけど」
彰は、そう言いながら助手席と運転席の間に手を伸ばす。
彰の言葉に、私は何気なく彰の手の向かう先を見た。
するとそこには、今日、朝からずっとバックの中に隠し持っていた、去年あげようとしていた誕生日プレゼントの箱があった。
「あっ!待って!それは……」
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