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犬、やめました。
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「……そんな明らかに凄そうな指輪、たった数日で用意なんて出来なさそうだし……」
「は?俺を誰だと思ってんだ。数日ありゃ、この世で俺に用意出来ない物なんてねぇよ」
「そ……そっか」
よく分からないけど、そんなものなんだろうか?
「親父の説得に失敗しても成功しても、どっちにてもお前と婚約するつもりだったから。だから超特急で指輪を作らせた。
でも結婚指輪は二人で時間をかけて、もっと凝った物にしてぇな」
そう言って目を細める。
婚約指輪……。
結婚指輪……。
そんな非現実的な言葉が彰の口から出るなんて。
しかもそれを渡す相手が私だなんて。
でも彰の口からそんな単語を聞いても、何故かまだ現実味を感じない。
だって、信じられないもん。
まだ彼女だって実感も湧かない今、突然そんな事を言われたって……。
「私ら、付き合ってまだ数日だよ?なのに……」
「ずっと一緒に居たい奴を決めるのに、そんなの関係ねぇだろ」
「そ、そうなんかな?
それに、私はもう令嬢でもないし、飛びっきりの美人でもないし」
「そんなの望んでねぇよ。
俺は令嬢でもなく、飛びっきり美人でもなく『遥』がいいんだよ」
ってか世界一可愛いだろうが、と微かに聞こえて、静かにボッと顔に火が付けられる。
「え……あっ、そ、それに……」
「まだあんのかよ」
ダルそうに言われ、いつもの彰が顔を出す。
「次で最後だよ!……その…………犬じゃなくても、いいの?」
「ここに来てそれか?相変わらず馬鹿だな」
口を歪めて笑う彰の目は、優しい。
「だって……」
「当たり前だろ?もうお前は俺の彼女で、将来は俺の奥さんになるんだろ」
信じられない……。
夢みたいだけど、これは夢じゃないんだ。
私、やっとプロポーズされてるって実感し始めてる。
「もう質問は無いな」
その言葉に何度も頷く。
「私ね……。
ドン引きするかもしれないけど、昔に彰とこの観覧車に乗った時には、もう彰の事が好きだった。
意地悪で、イタズラばっかされていたのに。
時々感じる優しさに、普段の意地悪さが吹っ飛ぶ程に嬉しくなって、でも急に冷たくされたりするとめちゃくちゃ悲しくて……それで憎さを感じて。
でも、彰に日々翻弄されながらも、心の中にずっと彰がいたんだよ」
「俺も」
「えっ」
「俺も、この観覧車に乗った時には遥が好きだったよ。当時は自覚は無かったけどな」
「嘘っ……」
「一応言っておくけど、あの時のスピーチは嘘じゃないから」
そうなんだ。
完全に建前的な話だと思っていた。
「ずっと、俺もお前だけを見ていた。
こんなに長い間、ずっとお前だけが俺の中で居座り続けてんだから、もう家族になるしかねぇだろ」
困ったように笑う彰は、知らない間に溢れて出ていた涙を片手で拭ってくれる。
「俺ら、酷い遠回りをして来たな」
優しく囁くように言う彰の声に、涙が溢れて来て、コクコクと頷くとぽたぽたとドレスに涙が落ちていった。
「……で。俺、ずっとこのポーズのまんまなんだけど?お前いつ返事すんだよ」
「は?俺を誰だと思ってんだ。数日ありゃ、この世で俺に用意出来ない物なんてねぇよ」
「そ……そっか」
よく分からないけど、そんなものなんだろうか?
「親父の説得に失敗しても成功しても、どっちにてもお前と婚約するつもりだったから。だから超特急で指輪を作らせた。
でも結婚指輪は二人で時間をかけて、もっと凝った物にしてぇな」
そう言って目を細める。
婚約指輪……。
結婚指輪……。
そんな非現実的な言葉が彰の口から出るなんて。
しかもそれを渡す相手が私だなんて。
でも彰の口からそんな単語を聞いても、何故かまだ現実味を感じない。
だって、信じられないもん。
まだ彼女だって実感も湧かない今、突然そんな事を言われたって……。
「私ら、付き合ってまだ数日だよ?なのに……」
「ずっと一緒に居たい奴を決めるのに、そんなの関係ねぇだろ」
「そ、そうなんかな?
それに、私はもう令嬢でもないし、飛びっきりの美人でもないし」
「そんなの望んでねぇよ。
俺は令嬢でもなく、飛びっきり美人でもなく『遥』がいいんだよ」
ってか世界一可愛いだろうが、と微かに聞こえて、静かにボッと顔に火が付けられる。
「え……あっ、そ、それに……」
「まだあんのかよ」
ダルそうに言われ、いつもの彰が顔を出す。
「次で最後だよ!……その…………犬じゃなくても、いいの?」
「ここに来てそれか?相変わらず馬鹿だな」
口を歪めて笑う彰の目は、優しい。
「だって……」
「当たり前だろ?もうお前は俺の彼女で、将来は俺の奥さんになるんだろ」
信じられない……。
夢みたいだけど、これは夢じゃないんだ。
私、やっとプロポーズされてるって実感し始めてる。
「もう質問は無いな」
その言葉に何度も頷く。
「私ね……。
ドン引きするかもしれないけど、昔に彰とこの観覧車に乗った時には、もう彰の事が好きだった。
意地悪で、イタズラばっかされていたのに。
時々感じる優しさに、普段の意地悪さが吹っ飛ぶ程に嬉しくなって、でも急に冷たくされたりするとめちゃくちゃ悲しくて……それで憎さを感じて。
でも、彰に日々翻弄されながらも、心の中にずっと彰がいたんだよ」
「俺も」
「えっ」
「俺も、この観覧車に乗った時には遥が好きだったよ。当時は自覚は無かったけどな」
「嘘っ……」
「一応言っておくけど、あの時のスピーチは嘘じゃないから」
そうなんだ。
完全に建前的な話だと思っていた。
「ずっと、俺もお前だけを見ていた。
こんなに長い間、ずっとお前だけが俺の中で居座り続けてんだから、もう家族になるしかねぇだろ」
困ったように笑う彰は、知らない間に溢れて出ていた涙を片手で拭ってくれる。
「俺ら、酷い遠回りをして来たな」
優しく囁くように言う彰の声に、涙が溢れて来て、コクコクと頷くとぽたぽたとドレスに涙が落ちていった。
「……で。俺、ずっとこのポーズのまんまなんだけど?お前いつ返事すんだよ」
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