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犬、やめました。

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…………

……

会場に向かう通路を共に歩く彰は悩ましげに言う。

「まだ信じられない」
「ん?私達が認められた事?」

「いや、それはある程度勝算があったから驚いては無いんだけど……」
「じゃあ何?」

「ん~……親父の……意外な純愛?みたいな」
「えっ」

「俺は昔っから、親父はただの若い女好きだと思っていたから」
「そうなの!?見た感じ全然そんな感じじゃないじゃん」

「そうなんかな。客観的にはもうよく分かんねぇな。
でも、小さい頃、何度か親父と若い女が仲良さそうにしてる姿を目にしてから、女好きしか見えなくて、それでずっと親父が嫌いだった。
あんな事情があるって知ってたらもっと……」

もしかして、自分を責めてるのかな。
「仕方ないよ。二人は圧倒的に話す時間が少ないんだし」
「時間……か……。確かに少ないよな。家族は普通は毎日顔合わすのものらしいけど、そんな家族像を想像すら出来ない位に俺ら家族はバラバラだったし」

そうだよね。
彰は美貌や名誉や類まれな数々の才能を持って産まれて来たけど、普通の家庭だと当たり前みたいき貰える親からの愛情を知らない。
……まぁ私もちゃんと貰って育ったのか微妙だけど。

彰に、愛情を教えてあげれたらいいのにな。

「そうだよ。それに香織さん、めちゃくちゃ若く見えるのに格好もころころ変わるから、見る度に違う人に見えたんだと思うし。
彰がそう思っても仕方ないと思うよ。だから彰のせいなんかじゃないよ」


「……なんだよ。俺、別に自分を責めてるわけじゃ……」

「あれ?そうなの?だってさっき……」
「うるせぇ。遥のくせに生意気だな」
何が生意気なのか分からない私は、頬を掴まれてヒヨコグチにさせられる。
「なにひゅんのよ」

「着いたぞ。シャキっとしろ」
と言うとパッと手を離して会場の入り口を開ける。

時間にして、多分一時間も経っていなかったはずなのに、ステージ上で付き合ってる宣言をされたのが、とうの昔のように感じるのは何故だろう。

「彰、探したよ。主役なのにどこいってんだよ」
会場に入るなり遠くから同世代の男性が手を振って言った。
すると周りも彰を待っていたかのように集まってくる。

「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
小さく手を振って送り出した後、辺りを見渡し、愛美ちゃんを探す。
すると私の名前を呼ばれ、振り返った。

そこには、何故かさっき別れたばかりの彰のお父さんがいた。
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