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犬、やめました。

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「何か事情があるのは知ってたよ。ずっと崇を守ってくれててありがとう。
初めて事情を聞いた時は、なんで言ってくなかったの!?って思ったけど」
香織さんがそう言うと、覆っていた手が離れて眉を寄せた顔が現れる。

「……ずっと守っていた、なんて……そんな良いものじゃない」

「どうして?」
そう聞くと彰のお父さんはうつむいて固く口を閉じた。


「悪りぃけど、あまり時間が無いからその辺の話は後で二人の時にやってくれ。
で、今度は俺から親父おやじに聞きたい事がある」

「……なんだ」



「親父に制限や規制を掛けていた爺ちゃんも婆ちゃんも、もうこの世には居ない。なのにどうしてまだこんな事してんだ?」

「こんな事、とは」
「他に男を作って、ただ籍を入れてるだけの母さんと離婚せず、時々香織さんと会ってる事だよ。
お互いの事を考えると、さっさと離婚して再婚すればいいじゃねぇか」

「そんな簡単な話では無いのはお前でも分かるだろ。離婚なんてしたら、うちと綾小路グループの提携も無くなって業績が下がるのは避けられない。
提携した事によって広げた事業も縮小か……あるいは撤退を余儀よぎなくされるか……」
「理由はそれだけか?」

「それだけ、だと?何を言っている。十分過ぎる理由だ。他にも体裁ていさいとかも諸々もろもろあるにはあるが……」

「そうか、なら良かった」
彰はそう言うと、さっきまで彰を止めていたガードマンのような人に睨みを効かせてから元の席に座った。

「母さんに聞いといてやったよ。もし親父が離婚したいって言ったら、今組んでる提携を切るのかって」
「何?お前、勝手にそんな事……」
「そしたら書いてくれたよ。ほら」

そう言って彰は机の上に1枚の紙を出した。

「なんだ、それは……」
彰のお父さんはその紙を慌てて手に取ると、すぐに目を丸くした。


「これは⋯⋯」

いつの間にか移動していた香織さんが、彰のお父さんの背後からピョコッと現れる。
「あらやだっ、これ凄いんじゃない?」
「香織⋯⋯」

「まさか……。これは、本物か?」

彰は組んだ脚をゆったりと組み替えた後に言った。
「当たり前だろ」
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