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犬、やめました。
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しおりを挟む東十条家の談話室――
長いソファに座る私は、膝に拳を置いてゴクリと唾を飲む。
それに対して隣に座る彰は、これからの人生を左右するだろう話し合いが始まるというのに、驚く程に堂々としたものだ。
そして彰のお父さんは、相変わらず黙ってるだけで圧倒してくるような凄いオーラと威圧感を放っている。
キョロキョロと周りを見ていると、大きな机を挟んだ向かい側に座る彰のお父さんが長い脚を組んで口を開いた。
「それにしても……君はよくこの東十条家の敷地に足を踏み入れれたものだね」
「なんだよ、その言い方は」
「彰は黙ってなさい」
「黙ってれる訳ねぇだろ。会場の時も、ここまでの道も。なんだよ、そのクソ嫌味みたいな言い方は。そんな言い方しか出来ねぇのかよ」
「彰。私は大丈夫だから。それよりパーティの最中なのに主役が抜けて来ているんだから、早く話を始めようよ」
この程度の事、本当になんとも思わないのに。
彰は私の言葉に、いかにも納得してないみたいな顔をしてから舌打ちをすると、そっぽ向く。
「君たちは私に話があるみたいだけど、その前に私からの質問に答えて貰ってもいいかな?」
そっと指先を合わせる彰のお父さんに、頷き返事をする。
「……はい」
「白藤さん。君は私との約束は忘れているわけでは……ないんだろうね」
「はい。しっかりと覚えています」
「そうか。覚えているのにどうして今、彰と共にいるのかな?
私との約束を破るなんて、一体どういうつもりなのか是非聞かせて頂きたい」
「それは……」
「理由によっては、それ相応の対応をさせてもらいたいと思っている」
その時、突然ガンッと大きな音が鳴った。
私はその音に驚いて、座ったまま小さく飛び跳ねると、すぐに横から彰の怒鳴り声が飛んだ。
「それ相応の対応だ!?なんだそれ!親父が納得いく理由じゃなかった時は、遥に何するつもりなんだよ!」
彰の怒りに満ちた横顔から音がした方に視線をズラすと、なんと、高そうな机に片足をかける彰がいた。
よく見ると机が大きく歪んでズレている。
その事にギョッとした時、腕をぐっと掴まれた感覚に見上げる。
すると、そこには私を見下ろす彰。
なんで立ってるの?って思った瞬間に、彰に引っ張り上げられて無理やり立たされた私は、訳が分からず頭が混乱して口を開く。
「何?」
「もう我慢ならねぇ!遥。行くぞ」
「え?行くって……どこに?なんで?まだ話も始まってもな……」
「話はもういい!今度お前抜きでする」
「え……なんで?」
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