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追憶
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しおりを挟む「遥って、嘘が下手だよな」
「ど、どういう意味よ!別に興奮したりしてないんだから!」
「そういうとこだよ」
そと言うと、何故かまたククっと目を細め笑った。
き、機嫌が直ってる。
やっぱ彰の事はよく分からない。
そしてなんだか悔しいのは何故?
でも、これからはこうやって彰と一緒にいられるだよね。
分からない事もまだまだあるけど、こうして肩を並べて居れるだけで十分幸せ…………
…………って!
「待って!私めちゃくちゃ大事な事、すっかり忘れてた!」
勢いよく起き上がり言うと、なんだよって顔が向く。
「どうしよう!彰!」
「どうした?」
眉をしかめた彰がダルそうに身を起こして、立てた片膝に肘を置き、綺麗な顔で覗き込んで来る。
「私、実は⋯⋯彰のお父さんと『彰と関わらない』って約束をしてしまってるの」
「ああ、知ってる」
彰のその一言に、暫く固まってから目を剥いて驚く。
「……え。……ええーー!!なんで!?」
私の叫び声に彰は、人差し指で耳を塞ぎ、鬱陶しさ極まりない顔をする。
「っるせぇ。ってか俺を誰だと思ってんだ」
そう言われて、だいたい理解が出来た。
お馴染みの東十条チートだって。
でもそのチートパワーは、力の根元であるお父さんには勝てるはずない。
だから、彰のお父さんにバレたら、どんな手を使ってでも絶対に別れさせられる絶対に別れさせられる。
せっかく両想いになった所なのに……。
そんなの絶対に嫌っ。
「私達、海外に逃亡しないといけないんだよね」
「は?」
「日本だと駄目だもんね。すぐバレちゃいそうだし」
せっかく結ばれたのに、彰とまた離れさせられる恐怖。
香織さんから聞いた東十条家の酷すぎる数々の仕打ち。
さっきまで平和ボケしてただけで、一気に今の状況がマズい事に気付いて、心臓が不整脈を打ち始めて頭がパニック状態になる。
「待て、言ってる意味が……」
「私の方は周りに上手く言ってどうにかする。本当はユイユイや高校からの親友にだけにはちゃんと本当の話もしておきたかったけど……ああ、でも大学とかどうしよう……。夢も諦めないと、いけないのかな……」
彰の黒っぽいガウンの襟元を掴んで胸元に埋まった私に、溜め息の呆れ声が落ちて来る。
「さっきから、なんの話をしてんだよ」
なのに、私の後頭部を撫でて来た手は酷く優しくて、温かい。
「……もう私、彰と離れたくないよ……」
呟くように言うと目頭が熱くなって、ガウンを掴む手に自然と力が入る。
「全く話が読めねぇ⋯⋯。とりあえず一旦落ち着け」
そう言いながら背中に回して来た手でグッと引き寄せられる。
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