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追憶

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「ここまで言えば分かるだろ!?」
「分からないから聞いてんじゃん」

「だから…………
遥が好きだって言ってんだよ!……分かれよ!馬鹿」


遥が好きだって言ってんだよ!
遥が好きだって言ってんだよ!
遥が好きだって言ってんだよ……だよ……


……その言葉が何度も自分の頭の中でこだましているのに、嘘にしか思えない。


その言葉に現実味なんて全く感じれない。
なんのドッキリだろうって。


機嫌の悪そうなトーンの声が頭上に落ちてくると、肩を持って引き離して私に真剣な眼差しを向けて来た。

「それとも、もう崇ニィの女にでもなってしまったか?あいつ、何度聞いても口割らねぇし」
「えっ、崇お兄ちゃんの……?」

「お前、昔っからタカニィの事好きだったもんな。俺が邪魔しなければ、もっと早くにくっ付いていたのにな」
顔を歪めて言う彰に、戸惑う。

「どうしよう……おかしい。
さっき言った彰の言葉が本物みたいに聞こえてくるんだけど。
どうせ、からかって私をだまそうとしてるんだと思うのに……」
取り乱しそうな心に、胸元のシャツをつかむ。


「俺がいつ騙したんだよ」
「覚えて、ないけど……でも私を騙してもてあそぶ事もあったし……」

「俺は、どうでもいい時にお前をからかう事はあっても、こんなクソ真面目な時にだましたりなんてしない」

そう言われて記憶と照らし合わすと、確かにその通りかもしれないと思った。でも……

「そうかも……しれない。けど、でも仲のいい婚約者さんがいるのに、こんなの冗談でも良くないよ」
口にするのも辛くて視線を落とす。

「俺がいつ仲のいい婚約者がいるなんて言った?」

「言ってはないけど……仲良いでしょ?」
「全く仲良くねぇよ」

「だって……あの時…………」
「あの時ってどの時だよ」

「彰んちの門で…………キ、キスッしてた、し」
平気そうに言っておきながら、あの時の二人を思い出すだけで、一年も経ってるのにジワっと涙が溢れて来た。


「あれは……おどして婚約を断ったら逆上しただけだ。まさかキスしてくるなんて思わなかったんだよ」
「……え?」
驚いて彰を見上げると、眉を寄せて街灯に照らされる彰が映った。

「あれは不意打ちみたいな感じで、防ぎようが無かったんだよ。
婚約者には俺から連絡した事なんて一度もないし、あの日、親父に騙されて初めて会っただけだ」
「嘘、初めて…………!?」

「ああ。あの日、結局親父は帰って来なくてめられたと思ったら、その時間は親父はお前と会っていたって、後日知った。
今思うと、ああやって鉢合わせになる確率も、親父の戦略だったのかもしれないな」

「何……それ」
え?じゃあ私達、ずっと両想いだったって事?
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