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追憶

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「なんですって?」
「ラクに生きれている、だ?本当にそんな風に見えんのかよ!」

「なんなの?さっきからあなたは!何も知らないくせに偉そうに。私のどこが節穴だって言うのよ!」

「高校入ってから働き詰めで、なのにちゃんと勉強もして、そんな状況下で一流大学に入って……
それだけでも十分褒められる事なのに、学費の為に男嫌いなのに弱音も吐かずに夜の仕事して、更には家に金まで入れて……。
その生き方が本当にラクに見えてんなら、お前の目は節穴だって言ってんだよ!!」

怒りに震えたように、下唇を噛んで聞くお母さんに更に追い討ちをかける彰。

「おい、低賃金の旦那の給料だけじゃここに住めないはずなのに、ここのマンションに住めてるのは何でだ?
普段の食費は?お前がここ数年働いてないのは誰のお陰だ?……言えよ!!」

なんでそんな事知ってるの?って言いたくなる事が彰の口から次々と出ているのに、そんな事どうでも思えるくらいに自分を肯定してくれる事が嬉しくて……涙が出た。
「うっ……」

でもそれと同じくらい、私を否定してくるお母さんの言葉に心がズタズタになっていた。

「だって……。遥が出してくれるって……言うから……」
「だから?」

叱られた子供のように、唇尖らせ言う。
「だから……使ってるだけだし」



「は?娘が夜の仕事をして稼いできた金を、『出す』って言ったらすんなり受け取んのか?それでも親か。
大した理由があるなら多少分かる。でも、ただ自分の欲望を叶える為だけに、娘が嫌な思いをして稼いだ金を使うのがおかしいって、なんで分からないんだ!?」

「だ……だって……」
眉をひそめて黙り込むお母さんは、言い訳を探しているように見えた。

「凄く、大変だったのよ……。は、働いたら……足はむくむし、肩は凝るし疲れるし。労働って人生の終わりみたいな場所じゃない?私、もうあんな思いはしたくなくて……」

「だから何年も、そうやって娘に嫌な思いを押し付けてるんだな。最低だな。自分の娘だろ」
「何よ!何もかも私が悪いって言うの!?大して労働の辛さも知らないあなたが!!」

「そうだな……確かに俺は、その『労働の辛さ』というのは知らない。
でも、母親よりも『遥の辛さ』なら分かってるつもりだ」

「ほら、みんなそう。遥、遥、遥!
面白い程みんな私じゃなくて遥ばっか見て……。
そんな中でも和君は私を一番に見てくれてると思ってたのに……」
そう言うとお母さんはグズグズと泣き出した。
その姿を見ると、こんなに心をズタズタに切り裂かれる様に来るしく感じた。


「ラクな生き方をしているのは、遥じゃなく、お前だ」
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