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追憶
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しおりを挟むそこには、私の腕を掴んで真横に立つ和君。
「……え」
なんでいるの?とか、色々な言葉が浮かんで来ても、何故か言葉が出なくて体が固まった。
「悪い子だね。飲みなおしって言ってたのに。まぁ、そんな事だろうと思っていたけどね」
と言い終わると同時に吸っていたタバコをピンッと跳ねて地面に落とし、すりつぶすように踏んだ。
そしてすぐ横に止まってる車のドアを開けたと思うと、いきなりそこに私を車に押し込んで来た。
「えっ、ちょっ……!?」
入れられまいと抵抗する。
「ほら、さっさと早く入って。じゃないと君のお母さんにある事無い事言っちゃうよ」
「は?」
待って。全く意味が分からない。
と思っていると、凄い力で雑に車に押し込まれて、すぐにドアが閉まった。
慌てて閉まったドアを開けようとしたけど、ドアノブが壊れたかのように、いくら引いても全くビクともしない。
そんな中、運転席に入って来た和君は、
「危ない危ないっ。忘れてた」
と鼻歌でも歌いそうな声で言って、私を驚く程に強い力でひっくり返し手を後ろ手にされる。
訳が分からないうちに腰あたりでガチャンという金属のような音が鳴ったと思うと、私の手の自由を奪われていた。
「は~。やっと遥ちゃんが俺の物になるんだね」
「さっきから……何訳の分からない事言ってるんですか!?
こんなの犯罪ですよ!さすがにこんな事までされると、私、今までの事も含めてお母さんに言いますから!」
脅しのつもりでそう言ったのに⋯⋯
次の言葉でそれは全く脅しになっていないと知った。
「ずっと、遥ちゃんが気になってたんだー。
本当は遥ちゃんに近付きたくて君のお母さんに近付いたって言ったら……遥ちゃんはどう思う?」
「え⋯⋯」
そんな事を微笑みながら言う和君の目に、言葉に出来ない程の恐怖が押し寄せて、再び私の声を奪った。
和君が言った事がもし本当なら、さっきのは脅しになってないって事になる。
そして、私はもう何を言っても、和君を止める手段は無いんじゃないかと思った。
その事が恐ろしくて血の気が引く感覚がして、震えまで出て来た。
そんな私の心情とは相反して、和君は興奮した様子で運転席から後部座席に移動してくる。
「あー駄目だ。家まで待てないかも」
って呟きながら。
そして後部座席に来た和君は、私の肩をトンっと軽く押した。
それだけで手の自由が奪われている私は、視界がぐるりと回って仰向けになってしまった。
なんで仰向けになったのか、意味が分からなくて首を回して周りを見ると、後部座席はフラットになっていた。
瞬時に計画性を感じとって、さらに恐怖心を煽ってくる。
「はぁー、近くで見れば見るほど可愛い。
君のお母さんが僕のお店でバイトをしていた頃、君が傘を届けに来た時があったでしょ?
俺はその時から、君が欲しくてたまらなかった。
アイツが邪魔しなかったら、もっと早く遥ちゃんは俺の物になってたのに……」
……アイツ、って?
頭の上に疑問が浮かんだ瞬間、私に跨《またが》って来た和君は荒い息で顔を近づけて来た。
「や、止め……」
私は涙をこぼしながら、手も使えないのに、そんな和君から必死で顔を振って避ける。
「ふふっ、可愛い。そんなので逃げれるって思って……」
気持ち悪い⋯⋯。
最悪……。
香織さん、やっぱ男はゴミ屑だらけだよ……。
その時ーー
ガチャっとドアが開く音がした。
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