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親父の過去
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……
「おい、いつまでここに閉じ込める気だよ。いい加減出せよ」
実家の俺の部屋のドアを叩いて言う俺に、親父の世話役の声がドア越しに返ってくる。
「それは出来ません。何度も申し上げておりますが、お出しすることは出来ませんのでもう諦めて下さい。そして明日は大切な結納の日ですので、お早目にご就寝なさってください」
飽きた結納だかは、ここから出たいんだろ!!
あぁー……
いきなり大学帰りにかっ攫われたと思ったら、実家に軟禁されるなんて。
何としてでも明日の結納の場に出させるつもりなんだろう。
ならこれ以上、ここでこいつに何を言っても意味無いんだろうな。
窓から出てやろうか。
一応ここ2階だし…………って!
なんだよ!あの鉄格子は!
いつの間に……
窓という窓、全部に鉄格子がついてやがる。
「ハッこんなの、まるで監禁じゃねぇかよ……」
やる事が凄すぎて、一瞬笑いが出てそのままベッドに横になった。
自分の部屋の天井に向かって大きな溜め息をつく。
「なぁ……親父。……やってる事一緒じゃないか」
…………
……
結納当日、天気は快晴。
朝からずっと逃げる隙を見計らっていた。
着付けの時も、ヘアセットの時も。
なのに結局全く隙なんて無く、格闘選手みたいな親父の世話役にも見張られ続けた俺は、ついに結納の場まで連れて来られてしまった。
顔合わせの部屋の隣にある東十条家用に用意された控え室に入る。
「素敵っ」
連れてこられた俺の心情を知ってか知らずか、ここで待機していたメイド達が声を揃えて言っている。
その時、いきなり俺の視界を埋め尽くたババアが念押しするかのように言った。
「お坊ちゃま。おはようございます。本日は余計な事はなさいませんようにお願いしますね」
「余計な事ってなんなんだよ」
「どうせ今でも逃げ出そうとか、そんな事を考えているんだろう?彰お坊ちゃまは諦めが悪いですからね~」
そう言われて内心ギクリとした。
「前にも言ったように、その道は茨の道だよ。
既に遥ちゃんに火の粉が降りかかっているのが何よりの証拠じゃないか。
そのまま無理やりその道を進もうとするのなら、遥ちゃんもこれくらいでは済まないと思うよ。悪いことは言わない⋯⋯」
「るせえ……っ!!」
俺だってあれから色々考えてる。
だから最近は、もう遥の事は諦めた方がいいんだろうって、少しだけ思ってはいる。
親父の時とは違って、俺が一方的に好きなだけだし。
俺の気持ちのせいで遥をこれ以上傷つけたくはない。
でもあいつの顔を見たらきっと揺らいでしまうだろうから、数か月後に予定していた留学を早めてもらおうかとかまで考えてる。
あいつも、きっと俺がいない方が楽だろうし。
「……一昔前なら駆け落ちも成功したかもしれないけど、今の時代は情報社会と言うからもっと難しいだろうね」
駆け落ちなんて、お互い好きじゃないと出来ねぇのに、何言ってんだ。
ババアは今でも、遥が俺に気があるって思ってんだよな。
「だから結婚したくない奴と大人しく結婚しろってか?」
そう言うと黙り込んで悲し気な顔になる。
「…………ごめんよ」と言ったババアの体は更に小さくなった気がした。
入院中はあんなに遥とくっ付けたがっていたのにな。
まぁ、あの頃は親父が動いていなかったしな。
親父の親友や香織さんがどれだけ酷い目にあったのか、詳しくは聞いていない。
けどババアがここまでして止めてくるなんて、俺が想像できない程に本当に酷いものだったんだろうな。
でも……
「親父の世話役は?」
あのSPみたいな世話役、さっきまでこの控室にいたのに。
急に居なくなったな。
「まもなく時間だしドア前で待機してると思うけど、なんでそんな事聞くんだい?」
ババアの疑いの目から逃れるように窓の外を見て
「ふぅん」
と言うと、「まさかっ!」とババアは驚いたように言った。
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