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親父の過去

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…………

……
「もう一度言ってみろ!!」
振りかざされる竹刀しないで容赦なく俺を痛めつける、お父様。

「……っ!」
いつまで続くんだよ。
痛みで気が遠くなりそうだ。
地面が冷たいし、全身が痛い……。

「樹。19になったのに、まだ分からないか?」

刺さりそうな程に細い月が照らす広い庭で、俺は上半身裸で力も入らず起き上がる事も出来ずに横たわる。

「返事!」
痛みですぐに返事が出来なかった俺は、再び竹刀を振り下ろされ、竹刀の高い音が鳴ると同時に痛みが走る。
「うっ……」

いつもならとっくに終わっているのに、今日は酷くお父様の逆鱗げきりんに触れ、いつも以上にボロボロだ。

明日大学行けないんじゃないか。
それでも行けって言うんだろうけど。

「旦那様、もうこの辺にされた方が」
普段止めに入らない世話役が消えそうな声で言う。




「いいや、まだだ!
この馬鹿息子は、婚約を破棄したいなどと言ったんだぞ!
東十条家の長男としての立場がまるで分かっていない!
理解出来るようになるまでは止めん!」

また大きく竹刀をふりかざすのが見えて来る痛みに備えて強く目をつぶると、案の定、激痛が脇腹を刺した。
でも、それと同時にバキ竹刀が折れた様な音が鳴ったと思うと、竹刀の先だけが地面を転がり滑って俺の視界の中で止まった。

朧気おぼろげな視界で見ると、折れた竹刀をイラついた顔をして眺めるお父様がいた。

「チッ折れた。新しいのをよこせ」
そう言って折れた竹刀を地面に落とし、世話役に向かって手をヒラヒラさせる。

「申し訳ございません。今あるのはそちらが最後になります。明日までにはご用意させて頂きます」
「前もって替えも用意してないなんて、お前は能無しだな」



「申し訳ございません」
「もういい!今日はここまでだ、さっさと片付けろ」

そんなお父様の声が聞こえたと思うと砂利じゃりを踏む音がして、その音が徐々に遠のいていく。
足音が完全に消えたと思うと家の中に入る音がして、やっと終わったんだとため息を着いた。
直後、ザザザッという足音が近付いてきて、上半身裸の俺は抱きかかえられ、そのまま毛布で包まれた。

「お坊ちゃま大丈夫ですか!?」
抱きかかえたのは、俺の体を見て涙ぐむお父様の世話役。

「またこんなになって……すぐに手当させて頂きます」
「お前、あんな嘘ついて。お父様にバレたらどうするんだ」
「替えの竹刀のことですか?そんなのバレても構いません。こんな樹お坊ちゃまをただ見てる位なら」
そう言うとボロボロと涙を流した。


「泣くなよ」
「泣いてなどいません」
お父様の世話役は最近ミスをしてクビになった。
その代わりに、俺が小さな頃から時々世話もしていた奴に変わった。

だからか、俺がこうやって痛め付けられる度に目を覆って震えて泣きそうな顔をする。

昔からこの家では特に俺に優しくしてくれていた奴だから、俺のせいでとばっちりが行くなんて事があったら、きっと耐えられないだろう。
なのに、いつもそんな顔をして俺を見るから、いつかお前にとばっちりが行くんじゃないかと見てていつもハラハラするよ。


「本当に結婚がお嫌なのでしたら、旦那様じゃなく奥様に言われてはいかがでしょう?
まだ旦那様より取り入ってくれる気がするのですが」
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