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親父の過去

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何故か謝ってしまう。

「逃げた事?」
「いや」
そうじゃないけど⋯⋯。

黙ると彼女は首を傾げて言った。
「よく分かんないけど、さっきは助けてくれてありがとう」

「礼はいい。取り逃してしまって悪かった」
「え!?なんでお金持ちくんが謝るの?
それより手大丈夫?赤くなってる」
そう言って中年男性に叩かれ、赤くなってる箇所を心配そうに見て来る。

「大丈夫。こんなの全然痛くない」
そんな事よりこの体勢どうにか出来ないのか……あっ、そうだ。

「お金持ちくん……?」
彼女との間に隙間を作ろうとドアに手を突いた俺に、不思議そうな目で見上げてくる。

至近距離で見ると、堪らなく可愛い。
大きく潤んだ瞳にプクっと膨らんだ血色の良い唇。
体の線も細くて、このまま思いっきり抱きしめてしまいたい。

「次、あいつを見つけたらぶっ飛ばしてやるから」
「いいよ。よくある事だし」

「……え?よくあるの?」
「そうだよ。でも決定的になったら私もやり返すから大丈夫。さっきは手なのか鞄なのか分からなくて微妙な所だったから……」

「大丈夫じゃないよ!」
思わず電車の中なのに叫んでしまって、自分の口に手を当てる。
「え……お金持ちくん……?」

なんだこれ。
君の事になると感情的になって、いつもの俺じゃなくなる気がした。



「女の子なんだから……もっと自分を大事にしろよ」
「あ……ありがとう」

こんな所、万が一学校の奴らに見られてたら、なんて思われるだろうか。

そう思って彼女を見ると何故か耳まで赤面していて、それは俺にも移った。

ほんと、誰かにこんな俺を見られたら一巻の終わりだな。

そんな事を思いながらも、絶対誰にも聞かせられない言葉を口にした。

「こ、これから……毎日俺が守ってやるから。だから誰にも触らせないでくれ」

彼女が、知らない男に触られるのが余りにも許せなかった。

だからってこんな事言うと、もしかして変な奴だって思われるかもしれない。
そう思ったけど、彼女の顔を見ると嫌そうな感じは1mmも感じられなくて安堵した。

「誰にもって……。ってか毎日って無理でしょ?普段は車通学なんでしょ?」
首を傾げられ、俺は会った時に言おうと思って、前もって用意していた嘘の言い訳を話す。

「昨日、車が故障したみたいで、暫く電車通学になった。だから……」
「ああ!そういうなんだ。じゃあ車が直るまで一緒に通学できるんだね!
これから宜しくね」
俺の言葉が嬉しかったのか、屈託のない笑顔を見せた。

「あ……あぁ。よろしく」

俺と一緒に居れるのを喜んでくれているようで、それが嬉しくて、苦しい程に胸がいっぱいになった。
こんなの初めてだ。

「あ、俺の名前は『お金持ちくん』じゃなくて、いつきだから」

「樹ね。いい名前じゃん。私の名前は⋯⋯」
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