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親父の過去

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「は?⋯⋯なんの事だ」

「しらばっくれなくてもいいよ。見てたら分かるさ。私は彰お坊ちゃまが赤子あかごの頃から母親代わりをしてるんだからね。⋯⋯遥ちゃんは昔から特別だっただろ?」
そう言うと鬱陶うっとうしさを覚えるくらいの目でニヤリと笑う。

まだ自覚して間もないこの気持ちが、そんな前から表に出てしまっていたのかと思うと、居た堪れない気持ちになった。

「私は彰お坊ちゃまとは血は繋がっていないけど、こーんな小さな時から見てるからね」
赤ちゃん位のサイズを手で表現しながら話すババアは、愛おしそうな顔をしてそのまま続けた。

「だから、本当は彰お坊ちゃまが好む人と一緒になって欲しい。⋯⋯⋯⋯でも、その道が幸せとは限らないんだよ」
そう言うと泣きそうに笑った。

「その道はね、想像以上に茨《いばら》の道なんだよ。私はそれをこの目で見てきたからね」

「見て来た……、って?」

俺の言葉に、眉根を寄せて真剣な顔をすると口を開く。
「ここだけの話にしてくれるかい?」

普段見せた事のないババアの表情に、一瞬ためらってから返事をする。
「ああ」

するとババアはシワシワの小さな両手を強く握り合わせてから溜め息をつく。
そんな様子に自然と唾を飲んだ。



「あれは旦那様がちょうど彰お坊ちゃまくらいの頃、私はなんの役も任されていないただのメイドだったんだけど、そんな下っ端のメイドにまで一瞬で噂話が届いてしまう程の出来事が起きたんだ。
もう、翌日には新聞にも載って日本中が大騒ぎさ」

「日本中が大騒ぎ?なんだそれ、俺聞いた事ねぇよ」
「わざわざ誰も言わないさ。それにかなり年月も経ってるしね。でも調べたらすぐに分かるよ」
「そうか。で、何があったんだ」



「……旦那様の駆け落ちだよ」
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