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涙の決断
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しおりを挟む「お前、なんでいつもそうやって俺から逃げんの?さっきは普通に話してたのに」
「そ……それは……。風邪ひいたら駄目だし」
「ハッ。なんだそれ」
歪んだ顔で鼻で笑う彰は冷たい目を向けて来た。
「これだけは覚えとけ。関わるつもりないって、お前は勝手に吠えてるけど、俺はそんなの絶対に許さないから」
「許さないって……」
そう言うとAKIRAの手が首に伸びてきて、ほんの少し圧迫された。
「……っん」
驚いて圧迫する彰の手首を掴む。
「二度と俺から逃げられないよう、首輪でも付けてやろうか?」
冷ややかにそう言われて、全身に変な汗が出そうになると、パッと首にあった手が離される。
「……でも、俺の事が嫌いなんだったら解放してやるよ」
そう……なんだ。
…………解放するんだ。
良い事のはずなのに、その事が酷く残念で、胸が苦しい。
そして、今『嫌い』と言えない自分はなんて弱いんだろう。
「何も言わないって事は、嫌いじゃないって事で、いいんだよな?」
そう言われても、私は下唇を噛んで何も言えない。
彰をブロックする前までは何度も連絡が来ていたし、大学に行けば彰はほぼ毎回様子を見に来てくれていた。
彰が私を気にかけてくれているのが実は嬉しいかった。私を求めてくれているみたいで。
まるで、私に好意があるみたいで……。
でも彰の将来を考えると、お父さんの約束通り離れないといけないし、頑張って彰を忘れようとしているのに、彰が関わって来ようとするせいで全然忘れれなくて、その事が苦しくて苦しくて……
だからこんな生活早く終わって欲しいと毎日願っていた。
ゴールはすぐ目の前。
なのに、何?これ……
体は拒否反応しか出ない。
「……俺、お前が何考えてんのか分かんねぇよ」
黙り込む私に、苛ついたように前髪をグシャっと掴んで深い溜め息をついた。
「犬止めるって言ったり、やっぱり戻るって自分から言い出したと思ったら、やっぱり関係持ちたくない?お前なんなの?俺を振り回すのもいい加減にしろよ!」
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視線を落としている私の顎を雑に持ち上げて見上げさせられる。
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その隙間から光る鋭い目が、私を捉えられて心臓を跳ねさせた。
逃げたい……。
「お前、また俺から逃げようとしてただろ」
その言葉にギクリとすると、掴まれていない方の手も掴まれる。
「答えるまで逃がさねぇよ」
掴まれた事に気付いた時には、自分の両手は頭上で固定されていた。
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