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涙の決断

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「……あ、あ……りがと」
私の心臓はとんでもなく跳ねている。
頬も熱いし、顔とか真っ赤になってるかも。
ただ手首を掴まれたくらいで。

既に何度も体の関係まで持ってるのに、変だしおかしいって心の中で呟く。

「馬鹿だろ」
とか言いながらも、またこうやって助けてくれてる。
あの事故の時も。
なんだかんだいって、客の時も⋯⋯


ゆっくりと手を引かれた私は、もう普通に立てているのに手を離してくれない。

その手を気にしている私は、あごを突き出し言われる。
「ほら、早く言え」って。

「言わないといけない事なんて、全然分からないんだけど」
「本当に分かんねぇの?」
そう聞かれて、もう一度記憶と照らし合わせてから気まずく頷く。

「勝手に離れるって言ってごめんなさい、だろ。馬鹿」

なんで?私が謝らないといけないの?
確かに一方的だとは思う。
でも、私より婚約者さんを選んだのは彰でしょ。
彰の方が色々謝る事があるんじゃないの?

「意味分かんない。手、離して」

さっきから、掴まれた腕が……触れている所が異様に熱い。

限界まで心臓が早鐘を打つ私は、思いっきり視線を地面に落とした。
これ以上、心が乱れないように。

「嫌だ」
えっ?何、その子供みたいな。

「手ぇ離したら、お前、また逃げるだろ?」


呼び出されて、嘘ついて婚約者さんと会ってた奴が、言うセリフ?

あんたは知らないでしょうけど、そういうので振り回されるの、めちゃくちゃ辛いんだから。

「……逃げて、なんか……」
「逃げてるだろ!電話にも出ないし、大学でもコソコソと逃げ回りやがって!」

責めないで。
私だって、こんな事したくてしてるんじゃないの。
本当は、今すぐにでもその胸の中に飛び込んで行きたいくらいなのに。

「もとはと言えば、あんたが私に嘘を……っ!」
そう言いかけて止めた。
ここで、いくらいがみ合った所で変わらないんだから。

「嘘?なんだそれ」
「なんでもない!早く離してよ!離さないなら、叫ぶから!」
「はぁ?やれるのならやれよ」

駄目……。
止めて。

これ以上は……


おどしなんかじゃないから。だから離してよっ」
そう言うと、とても低い声が落ちて来た。

「……そんなに嫌いかよ」
その反応は私の中では予想外で、見ないようにしていたのに思わず顔を確認してしまった。



「……えっ」

なんで、そんな顔してるの?

それは彰らしかぬ顔で、どこか淋し気でひどゆがんで見えた。

「なぁ。俺の事、そんなに嫌いか?」

嫌いなんて。
むしろ好きすぎて、全く薄まらないこの気持ちをどうしていいのか途方に暮れてる位なのに。

「離してっ」
試しに掴まれた腕を振り払おうとするも、ビクともしない。

「答えたら離してやる」
「答えたらって……じゃあ一生答えなかったらどうするつもりよ!」
「じゃあ、お前を一生離さない」
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