227 / 337
涙の決断
45
しおりを挟む「……あ、あ……りがと」
私の心臓はとんでもなく跳ねている。
頬も熱いし、顔とか真っ赤になってるかも。
ただ手首を掴まれたくらいで。
既に何度も体の関係まで持ってるのに、変だしおかしいって心の中で呟く。
「馬鹿だろ」
とか言いながらも、またこうやって助けてくれてる。
あの事故の時も。
なんだかんだいって、客の時も⋯⋯
ゆっくりと手を引かれた私は、もう普通に立てているのに手を離してくれない。
その手を気にしている私は、顎を突き出し言われる。
「ほら、早く言え」って。
「言わないといけない事なんて、全然分からないんだけど」
「本当に分かんねぇの?」
そう聞かれて、もう一度記憶と照らし合わせてから気まずく頷く。
「勝手に離れるって言ってごめんなさい、だろ。馬鹿」
なんで?私が謝らないといけないの?
確かに一方的だとは思う。
でも、私より婚約者さんを選んだのは彰でしょ。
彰の方が色々謝る事があるんじゃないの?
「意味分かんない。手、離して」
さっきから、掴まれた腕が……触れている所が異様に熱い。
限界まで心臓が早鐘を打つ私は、思いっきり視線を地面に落とした。
これ以上、心が乱れないように。
「嫌だ」
えっ?何、その子供みたいな。
「手ぇ離したら、お前、また逃げるだろ?」
呼び出されて、嘘ついて婚約者さんと会ってた奴が、言うセリフ?
あんたは知らないでしょうけど、そういうので振り回されるの、めちゃくちゃ辛いんだから。
「……逃げて、なんか……」
「逃げてるだろ!電話にも出ないし、大学でもコソコソと逃げ回りやがって!」
責めないで。
私だって、こんな事したくてしてるんじゃないの。
本当は、今すぐにでもその胸の中に飛び込んで行きたいくらいなのに。
「もとはと言えば、あんたが私に嘘を……っ!」
そう言いかけて止めた。
ここで、いくらいがみ合った所で変わらないんだから。
「嘘?なんだそれ」
「なんでもない!早く離してよ!離さないなら、叫ぶから!」
「はぁ?やれるのならやれよ」
駄目……。
止めて。
これ以上は……
「脅しなんかじゃないから。だから離してよっ」
そう言うと、とても低い声が落ちて来た。
「……そんなに嫌いかよ」
その反応は私の中では予想外で、見ないようにしていたのに思わず顔を確認してしまった。
「……えっ」
なんで、そんな顔してるの?
それは彰らしかぬ顔で、どこか淋し気で酷く歪んで見えた。
「なぁ。俺の事、そんなに嫌いか?」
嫌いなんて。
むしろ好きすぎて、全く薄まらないこの気持ちをどうしていいのか途方に暮れてる位なのに。
「離してっ」
試しに掴まれた腕を振り払おうとするも、ビクともしない。
「答えたら離してやる」
「答えたらって……じゃあ一生答えなかったらどうするつもりよ!」
「じゃあ、お前を一生離さない」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
義兄の執愛
真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。
教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。
悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる