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涙の決断
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「えっ!?」
その言葉に顔を上げて一瞬喜んだけど、直後、彰のお父さんの表情を見て喜びは砂のように消えた。
だって、あまりにも歪んだ笑みだったから。
彰のお父さんは私に、交換条件を持ち出して来た。
それは、一度終わったような気がしていた話。
「君が……、彰と一切関係を持たないと約束するのなら考慮しよう」
その言葉に、すぐに否定したくなった自分を引き止める。
あんなキスを見ても、心のどこかで二人の関係を否定して、どこかに落ちてないかと藁を探して、やっと見つけた藁に宝物をみたいに飛びついて……
こんな事、何度やっても意味がないのに。
ずっと私は馬鹿な事をしてるって、頭では十分に分かってるけど、諦めようとしても全然諦めきれなかった。
それ程に彰が好き。
きっと自分で思っている以上に、彰が好きなんだと思う。
関係なんて絶対切りたくない。
本当はずっと彰と一緒に居たい。
婚約者さんのことも、彰のお父さんのことも、ぜーんぶ無かった事になればいいのに。
そしたら、今からで、手土産でも買って、彰の家まで行って、無視してた事とか全部謝って仲直りしたい。
特別な事なんて要らないから、傍に居たい。
どうでもいい映画を肩を並べて見て、彰と同じ空気吸って、どうでもいい話とかしながら、ポップコーンなんて摘まんでさ……
本当に自分の事だけを考えたら、こんな事も可能かも知れないのに⋯⋯
そんな事が出来たら、どれだけ幸せだろう。
自分勝手な欲望が一瞬で頭の中を占領して渦巻いた。
でも――
もう答えが出た。
これからの長い人生。
私がここで約束する事で、彰が少しでも幸せになるのなら……
この決断でいい。
絶対に間違ってない。
「分かりました。
……今後、彰さんとは関係を持ちません」
「いい子だ」
目じりのシワを深まったのを見届けると、すぐ横のドアが開けられた。
その言葉に顔を上げて一瞬喜んだけど、直後、彰のお父さんの表情を見て喜びは砂のように消えた。
だって、あまりにも歪んだ笑みだったから。
彰のお父さんは私に、交換条件を持ち出して来た。
それは、一度終わったような気がしていた話。
「君が……、彰と一切関係を持たないと約束するのなら考慮しよう」
その言葉に、すぐに否定したくなった自分を引き止める。
あんなキスを見ても、心のどこかで二人の関係を否定して、どこかに落ちてないかと藁を探して、やっと見つけた藁に宝物をみたいに飛びついて……
こんな事、何度やっても意味がないのに。
ずっと私は馬鹿な事をしてるって、頭では十分に分かってるけど、諦めようとしても全然諦めきれなかった。
それ程に彰が好き。
きっと自分で思っている以上に、彰が好きなんだと思う。
関係なんて絶対切りたくない。
本当はずっと彰と一緒に居たい。
婚約者さんのことも、彰のお父さんのことも、ぜーんぶ無かった事になればいいのに。
そしたら、今からで、手土産でも買って、彰の家まで行って、無視してた事とか全部謝って仲直りしたい。
特別な事なんて要らないから、傍に居たい。
どうでもいい映画を肩を並べて見て、彰と同じ空気吸って、どうでもいい話とかしながら、ポップコーンなんて摘まんでさ……
本当に自分の事だけを考えたら、こんな事も可能かも知れないのに⋯⋯
そんな事が出来たら、どれだけ幸せだろう。
自分勝手な欲望が一瞬で頭の中を占領して渦巻いた。
でも――
もう答えが出た。
これからの長い人生。
私がここで約束する事で、彰が少しでも幸せになるのなら……
この決断でいい。
絶対に間違ってない。
「分かりました。
……今後、彰さんとは関係を持ちません」
「いい子だ」
目じりのシワを深まったのを見届けると、すぐ横のドアが開けられた。
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