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涙の決断

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驚いた声を落としてくる彰の首に腕を回し、軽くキスをした。


目を開けると彰の目が見開いていて、徐々に優しげに緩んだのが分かった。

つま先立ちをした足の指がプルプルと震え出すと、腰に手が回ってきて密着するように抱きしめられた。

勘違いしそう。
まるで愛されているみたい。

こんな訳の分からない関係、いつまで続けれるか分からない。

だからこそ、不安と罪悪感に押しつぶされそうでも……
彰の前では出来るだけ笑っていたい。

「行ってらっしゃい」
寂しさと、ザワザワとする胸の奥を押し潰してニコッと笑って見送る。

「…………行ってくる」
と言った彰の頬は、どこか血色が良くなっている気がした。





-東十条彰Side-
「おい、親父はどこだ」
東十条家に帰るなり出迎えたメイドに聞く。

「お帰りなさいませ、お坊ちゃま。あいにく、ただいま旦那様は外出中でして……」
その言葉に一瞬固まる。

「は?大事な話があるから今すぐに家に帰ってこいって言ったのは親父だろ!?」
メイドに怒っても仕方ないのに怒りが湧く。

その時、コツコツと足音が聞こえたと思うと、聞いたことのない声が俺の鼓膜を揺らした。
「もしかして……彰様でしょうか」

そのしなやかな声がした方を見ると、有名デザイナーの着物を着た同年代の女が立っていた。
客観的に見れば日本美人というところだろう。和服がその顔立ちの良さを際立たせているようにも見えた。
まぁ、客観的に、だが。
あいつ以外の女は、その辺の石ころと変わらない。


「お前、誰だ?」
見た事ない奴。

この家に来客なんて普段滅多に無いのに。
母さんの友人にしては年が違い過ぎるし。

「申し遅れました。わたくし、服部麗奈と申します。
……彰様の婚約者に当たります」
そう言うと、令嬢ならではの綺麗な作り笑顔を作った。

「……は?」
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