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一瞬の再会-東十条彰Side-

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「……へ?ここで?」
泣き顔は、瞬く間に驚き赤くなる。

「ああ」
「でも……ここ病室だし、それにアキラも目覚めたばっかだし。あっ!お医者さん呼ばないと……」
そう言ってどこか行こうとする遥を引き止める。
「いいから」

「でも……」
「俺がいいって言ってんだから、早くしろ」

個室なのに困った顔をしてキョロキョロと辺りを見回す遥に、妙に楽しい気持ちになってしまう。

さっき、笑わせたいと思っていたはずなのに、今は遥をもっと困らせたくなる。
気持ちを自覚してもそれは前と同じみたいだ。

俺は、屈折してるのか?

いや……きっと
俺はどんな遥も好きなんだ。

俺の言動に翻弄《ほんろう》されて困る遥も、俺と笑う遥も、俺の手料理を美味しそうに食べる遥も……

俺がさせた遥の顔は、どれも……



「ここだと……人が来ちゃうかもしれないし」
「別に大丈夫だろ?どうせここ、病院の特別室か何かだろ。勝手にドア開ける奴なんていねぇよ」
「で、でも……」
「ほらっ」

自覚なんて無いんだろうな。

遥は、そうやっていつも俺を煽ってるって。

どんどん真っ赤になって俯いてる遥を見ると、もっと恥ずかしがらせたくなる。

涙目になって、許してって懇願こんがんさせて、余裕なんて無くなる位にめちゃくちゃにしたくなる。

こんな俺に惚れられたお前は、たまったもんじゃ無いんだろうな。


「ほら、いつまで待たせんだよ。さっさとしろ。俺の犬だろ?」
わざと意地悪に言って、遥の細い腕を引いて息もかかる程に唇を近付けてやる。

俺の視界には驚き恥ずかしそうに見開く遥の大きな瞳。

更に真っ赤になった遥はギュッと目をつむったと思うとチュッと軽く唇が触れた。

直後、半歩離れて目を逸らすと言った。
「これ以上は……病院だから」

そんな姿を見ると、あまりの可愛さに思わず声が出るほど笑ってしまった。

可愛い。
あー、やっぱ好きだ。

そういう所も。
たまらない位に。



「なっ、何笑ってんの?」
「あぁー、下手くそなキスしやがって」
起きたばかりの時より力が入るようになってきた手で、雑に遥の腕を引き寄せる。

「キスってのはこういうのを言うんだよ」
そう言って再び唇を重ねる。

更に腰に手を回して密着するように遥を引き寄せる。

俺の愛はきっと、ただ笑わせたいだけなんて単純なものじゃない、卑屈な愛かもしれない。

だって、こんな困った遥も好きだから。

俺を迎え入れる準備もしていなかった唇をこじ開け、舌入れ込むと悩ましげな声が吐息と共に漏れる。
「んっ……」
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