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一瞬の再会-東十条彰Side-

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遥が、そんなに俺を心配してくれてたのか。

「河原さん、私は、好きな女なんかじゃないです。ただの…………幼馴染です」
頬を赤く染めた遥は、そんな事をサラッと言う。

『ただの幼馴染』

そんな遥の言動に酷い不快感を感じ、胸の中がモヤっとした。

「私のことはキヨコさんで良いって言っただろ?」
「あ、そうでした。すみません」

ただの……幼馴染?
違うだろ?

あぁ、そうか……。

『ただの幼馴染』って事なんだな。


「え……?ちょっと!アキラ何してるの?まだ起き上がったら駄目だよ!」
「るせぇ!」
「アキラ、一週間も寝てたんだよ!?凄く出血もしてたし」
そう言われて意識すると、確かに酷くクラつくし全身重い。

「触んな!」
支えようとする遥の手を振り払うと、また俺を引っぱたきにくるキヨコババア。

「お馬鹿!遥ちゃんに何してんのさ!」
「俺、病人だって言ってんだろ。痴呆症かよ。ついでだから一回ここの病院で診てもらった方がいいんじゃねぇか」

「誰が痴呆症だ!私は女の子を大事に出来ないような子に育てた覚えは無いよ!」
「キヨコババアには関係ないだろ」




「あるさっ。毎日毎日健気にお見舞いに来る遥ちゃんと、今では文通《ぶんつう》友達なんだから」
「文……通……?」

俺の目には、初めてのスマートフォン的な携帯をニヤリとして見せてくるキヨコババアが映る。

「文通って……いつの時代だよ」
「はぁー。お馬鹿なお坊ちゃまに本当に色々言いたい事は山のようにあるんですけどね~。
今日はもう行かないといけないから、ずっと心配してくれていた遥ちゃんとチャント話し合いしな」

分かってる事を先に言われてイラつく。
「るせぇ!さっさと帰れ」
と手でババア払いをすると何かを言いたそうな目がジトーと向く。

「時間がないけど、一つ忠告しておくよ。もうすぐ世話役が来る時間だからね。もたもたしてる暇はないからね。じゃ、邪魔者は退散するよ」
と言うとニヤニヤと気持ち悪い顔を貼り付けて、この広い病室を出ていく。



「え?邪魔者って⋯⋯?あ、行っちゃった。
キヨコさんって面白い人だね」
そう言ってキヨコババアを見送った遥は、頬に涙の跡を残した顔で振り返る。

「もうキヨコババアの話はいい。
それよりお前、まさかそんな目になるまで俺の事を心配してた⋯⋯わけじゃないよな」
遥の腫れた目元を見上げて不思議な気持ちになる。

「し……心配するに決まってるでしょ。
私を助けるためにアキラが車にぶつかって、血も沢山出て、運ばれて何時間も経って集中治療室から出てこないし、やっと出てきたと思ったら……ずっと目を覚まさないし……うう……」
そう言って俺の為にまた泣き出す遥。

「私のせいでアキラがこんな事になって、もう……目を覚まさなかったらどうしようって……うう……」
遥の言動に心がジワっと温かくなって……そして何故かその泣き顔にムラムラしてきてしまう俺。

遥の泣き顔は、妙にムラムラするんだよな。

「なぁ。悪いと思ってんの?」
そう言うとこくんとうなずく。
「じゃあキスしろよ」
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