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一瞬の再会-東十条彰Side-

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前回貸した来客用の部屋か?
前回貸したとはいえ、俺が不在なのに何も聞かずに借りるって遠慮なさすぎだろ。
まだ知り合って間もないのに、常識ねぇ奴だな。

釘でも刺しとくか。

スリッパの音を立てながら来客用の部屋へと向かう。

少し開いているドアから見えた来客用の部屋は、なぜか電気が付いていなく真っ暗で何も見えない。

なんで電気ついてないんだ?
そう思ってドアノブに手をかけた瞬間――

部屋の中から男の荒い息が聞こえた。




その瞬間、ドクンと大きく自分の心臓が鳴った。
一気に血の気が引いて、跳ね返りそうな程に勢いよくドアを開ける。

すぐに暗闇の部屋に、廊下から漏れたオレンジ色の光がさし、自分の影を作った。

その影の先には……

服が乱れてるなんてものじゃない。
シャツは半分脱がされ、スカートも捲りあげられて下着が丸見えになっている状態の遥が横たわっていた。

俺の目には、男がどっからどう見ても泥酔している遥の上に覆い被さっているようにしか映ってない。

視線を少し下ろすと、今まさにその下着までも脱がそうとしている様子が映って、勘違いでは無く、俺の予感が的中したんだと分かった。


「おい、これはどういう事だ?」とか「何してるんだ?」とか言う前に、一瞬で頭が真っ白になって、気付いたらそいつをぶっとばしていた。

壁に頭を打ったそいつは「うっ……」と小さな声を漏らす。


高校の時、たまたま遥が男どもに裏路地に連れてかれたのを見た時と同じ感覚。

血が沸騰するようで、
我慢できないほどに湧き上がる殺意。

誤って殺してしまわないよう、次々と溢れる殺意を抑えるのだけで精一杯。
気を抜けば本気で殺してしまうだろう激しい怒り。

今すぐこいつを殺したい……。

「おい、何くたばってんだよ」
唸り声をあげるそいつを、汚物を見るみたいに見下ろして腹に足を置く。

もう――
この辺りから、あまり覚えてない。


翌日、その部屋を見ると、白い壁に血痕が所々に飛び散っていてすぐに業者を呼んで壁紙を変えさせた。


そして、息をするようにそいつをまた俺の権力で退学にさせた。






忘れようとしても、勝手に浮かんできては俺の頭を占拠する遥。


特別⋯⋯。

そう、遥には『特別』という言葉がピッタリ当てはまる。

その『特別』という場所は遥だけしか座ることが出来ない気がする。

きっと、
今も、
これからもずっと。


でも、何がどう特別なんだろう。


そして、いつからだ?






忘れようとしても、勝手に浮かんできては俺の頭を占拠する遥。


特別……。

そう、遥には『特別』という言葉がピッタリ当てはまる。

その『特別』という場所は遥だけしか座ることが出来ない気がする。


きっと、
今も、
これからもずっと。


でも、何がどう特別なんだろう。


そして、いつからだ?





……多分、物心ついた時にはこんな気持ちになっていたような気がする。

嫌がられても俺に向いて欲しくて、わざと困らせて、泣かせて。

でも本当に泣くと罪悪感に蝕まれるから遥のせいにして、反抗して。

思い通りにいかない。
何か違う。

何がしたいのか自分でも分からないのに、それ以外の道なんて分からなくて、知らなくて、何度も同じことを繰り返した。

そのうち、沢山傷付ける事で遥の頭の中に俺がいっぱいになればいいと思うようになった。
その頃には、取り返しのつかない程に俺の中で遥がいっぱいになっていた。

そんな事してるから、遥の中の俺はどんどん怖い存在となって行ったんだろう。
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