168 / 337
一瞬の再会-東十条彰Side-
5
しおりを挟む
そんな中、この俺が笑って挨拶してやったのに小さな口は震えるだけで何も返って来ない。
昔の俺なら『返事出来ねぇのかよ。その口は飾りか?』とか言って怒鳴り散らしていただろうに。
でも、もう俺はあの時の俺じゃない。
「悪りぃな。6年経った今でも怒ってんだよな」
こんな事では罪滅ぼしにはならないだろうけど、落ちていた参考書を全部拾ってボロボロの自転車を起こしてやった。
なのに、呆然とした遥は感謝のひとつも言わない。
おい。
さすがにこれで何も言わないのは人としてどうなんだ?
薄々分かってたけど、俺が思ってた再会とは全然違った。
笑わないどころか、目も合わさないし口だって聞かない。
まぁ、これが現実か。
分かったよ。
お前の大っ嫌いな俺はさっさと退散してやるよ。
俺の手からは受け取らなさそうな本を自転車のカゴに入れると、途端に胸の痛みを感じた。
さっき感じた感情は一変して、喉辺りから胸元までを異様に苦しめた。
「じゃあな」と言って立ち去ろうとした時、コートのポケットからお気に入りのジャズが流れた。
携帯を手にして耳にあてる。
「なんだよ」
『お坊ちゃま。どちらにおられるのですか?本当にお一人でお帰りになるおつもりですか?』
「さっき、そうだって言っただろ」
そう言ってブチッと電話を切ると、目の前には興味津々に目を輝かせて携帯を見る遥がいた。
別になんの変哲もない、ただの携帯なのに。
「何?」
そう聞くと、またすぐに俺に頭頂部を見せて首をフルフルするだけでやっぱり話さないし目も合わせない。
その姿に酷いイラ付きを覚えた。
もうやめた!!
せっかくお前の事を考えて早く立ち去ろうとしていたのに!
なんだよ、こいつ。
元々は俺が悪いんだろうけど、俺が拾ってやったのに『ありがとう』の言葉一つも言わずに最後まで首を振るだけで済まそうってか?
「おい、遥!お前、口どこにやったんだ?」
皮肉を含め言うと、遥の体がビクッと震えた。
つい出てしまった言葉に引きつられて、いじめたい気持ちが次々と湧き上がってくる。
あー、我慢出来ねぇ。
あの時は幼かったからだと思ったけど、15歳の俺も同じようなものだと知る。
「なぁ。俺、そんな地面なんかに居ないんだけど?話す時は目ぇ見て話せよ」
地面ばっか見てる涙ぐんだ遥に、わざと目が合うように屈んでやる。
すると、今度は困った顔をして、今度は俺の反対方向に顔を向けやがる。
あー、やっぱこいつを前にすると、不思議と意地悪したくなるな。
「ごめん……なさい」
やっと聞けた消え入りそうな程にか細い声に、我に返る。
って……俺何してんだ。
別にいじめに来た訳じゃないのに。
ただ心配して来ただけなのに。
もしタイミングがあれば、あの時の事を謝りたかったくらいだったのに。
まぁそれは少し達成したか?
オレは遥から目を逸らして、大きなため息を付いた。
「もういい、じゃあな。次はこけんなよ」
そう言って背越しに手を振る。
そして数歩歩いた時、背中側から遥じゃない叫び声がが聞こえた。
振り返ると、さっきまで立っていた遥が、地面にひれ伏すように倒れている様子が映った。
「……遥!?」
昔の俺なら『返事出来ねぇのかよ。その口は飾りか?』とか言って怒鳴り散らしていただろうに。
でも、もう俺はあの時の俺じゃない。
「悪りぃな。6年経った今でも怒ってんだよな」
こんな事では罪滅ぼしにはならないだろうけど、落ちていた参考書を全部拾ってボロボロの自転車を起こしてやった。
なのに、呆然とした遥は感謝のひとつも言わない。
おい。
さすがにこれで何も言わないのは人としてどうなんだ?
薄々分かってたけど、俺が思ってた再会とは全然違った。
笑わないどころか、目も合わさないし口だって聞かない。
まぁ、これが現実か。
分かったよ。
お前の大っ嫌いな俺はさっさと退散してやるよ。
俺の手からは受け取らなさそうな本を自転車のカゴに入れると、途端に胸の痛みを感じた。
さっき感じた感情は一変して、喉辺りから胸元までを異様に苦しめた。
「じゃあな」と言って立ち去ろうとした時、コートのポケットからお気に入りのジャズが流れた。
携帯を手にして耳にあてる。
「なんだよ」
『お坊ちゃま。どちらにおられるのですか?本当にお一人でお帰りになるおつもりですか?』
「さっき、そうだって言っただろ」
そう言ってブチッと電話を切ると、目の前には興味津々に目を輝かせて携帯を見る遥がいた。
別になんの変哲もない、ただの携帯なのに。
「何?」
そう聞くと、またすぐに俺に頭頂部を見せて首をフルフルするだけでやっぱり話さないし目も合わせない。
その姿に酷いイラ付きを覚えた。
もうやめた!!
せっかくお前の事を考えて早く立ち去ろうとしていたのに!
なんだよ、こいつ。
元々は俺が悪いんだろうけど、俺が拾ってやったのに『ありがとう』の言葉一つも言わずに最後まで首を振るだけで済まそうってか?
「おい、遥!お前、口どこにやったんだ?」
皮肉を含め言うと、遥の体がビクッと震えた。
つい出てしまった言葉に引きつられて、いじめたい気持ちが次々と湧き上がってくる。
あー、我慢出来ねぇ。
あの時は幼かったからだと思ったけど、15歳の俺も同じようなものだと知る。
「なぁ。俺、そんな地面なんかに居ないんだけど?話す時は目ぇ見て話せよ」
地面ばっか見てる涙ぐんだ遥に、わざと目が合うように屈んでやる。
すると、今度は困った顔をして、今度は俺の反対方向に顔を向けやがる。
あー、やっぱこいつを前にすると、不思議と意地悪したくなるな。
「ごめん……なさい」
やっと聞けた消え入りそうな程にか細い声に、我に返る。
って……俺何してんだ。
別にいじめに来た訳じゃないのに。
ただ心配して来ただけなのに。
もしタイミングがあれば、あの時の事を謝りたかったくらいだったのに。
まぁそれは少し達成したか?
オレは遥から目を逸らして、大きなため息を付いた。
「もういい、じゃあな。次はこけんなよ」
そう言って背越しに手を振る。
そして数歩歩いた時、背中側から遥じゃない叫び声がが聞こえた。
振り返ると、さっきまで立っていた遥が、地面にひれ伏すように倒れている様子が映った。
「……遥!?」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
義兄の執愛
真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。
教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。
悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる