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一瞬の再会-東十条彰Side-
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しおりを挟むいつぶりだろうか。
体育の授業以外で走ったのは。
自分より背の高い奴がうじゃうじゃいる中でも足が早いと賞賛される俺は、あっという間にさっきの角に差し掛かる。
そして見えて来たのは、脳裏に浮かんでいた自転車と共に倒れている遥の姿ではなく……
ただ自転車だけが倒れているだけの光景だった。
辺りに本が散らばって大惨事な感じではあるが、遥自体には何も無さそうだ。
「はー、なんだよ」
心配して損したぜ。
でも、正直ホッとした。
さっきフラ付いてたように見えたから余計な心配してしまったみたいだ。
もう帰ろ。
あの様子だと俺なんかに手を貸してもらった方が嫌だろうし。
と思ってポケットにある携帯に触れると、か細く可愛い声が俺の耳に入った。
「無い……」
そんな困ったような声に上半身だけ180度振り返ると、遥だろう女が地面にしゃがみこみ手探りで何かを探していた。
何探してるんだ?
倒れた自転車の周りには沢山本が落ちてるけど、その女は本を持ち上げたり移動させたりして意味不明な行動をしている。
「何やってんだ、あいつ。この歳になっても訳分からねぇな」
そう呟くと、自分のつま先に何かが当たった。
見下ろした先には、すぐそこにある大型の図書館のシールが貼られた参考書があった。
辺りに落ちてる本をザッと見ると同じようなシールが貼られた本がいくつか。
勉強家にでもなったのか?
それとも普通の受験生ってこんなものなんだろうか。
「す、すみません」
俺が手にした本に気付いた女は何故か謝ってくる。
そして俺を見上げると、ピタッと動きが止まって、ゆっくりと大きな目が見開かれる。
「……ぇっ」
「遥……」
まともに目を合わすのは6年ぶりになるだろう。
こんな場所で、いきなり目の前に俺が現れたんだ。
だから遥がこんな驚いた顔をするのは予想の範疇。
でも予想外の事が起きている。
それは、遥と目が合った瞬間から俺の心身に異変が表れた事だ。
なんだよ、これ。
やばい。
心臓が爆発しそうだ。
今日は特に寒い日だってさっき聞いたばかりなのに、なんか急にめちゃくちゃ暑く感じてくる。
目の前の遥のは、ちょっとばかしニキビが多い気がするけど、そんな事は全く気にならない程に可愛いし。
だから、まともに直視出来ない。
なんだ、これ。
どうなってんだよ。
でも、俺はこんな乱れた内心を悟られないよう必死に平静を装う。
「よ……よぉ、久しぶりだな」
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