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一瞬の再会-東十条彰Side-

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一瞬だったけど、その女は俺の良く知ってる『白藤遥』に見えた。


見間違い?……じゃないよな。

でも、雰囲気はあまりにも違う。

転校して4年ちょっとで、普通こんなに変わらないだろ。


目を擦って自分の目と記憶を疑いながらも、もう一度風でも吹かないかと、ジュースを飲みながら見詰める……が、風はパタリと吹かなくなったよう。


他人の空似かと思ったけど、何故か俺は『遥を見間違えるわけない』という謎の自信があった。

背格好も遥っぽいし。

でも、服が酷いな。

なんだよ、その所々破れて擦れたコートにズボン。
靴だって色おかしくねぇか?

よく分からねぇけど、ビンテージとかにハマってんのか?似合ってねぇぞ、全く。


遥は、今でも俺の事を軽蔑視しているだろうな。

昔から、あいつを見てると何故か悪戯イタズラしたくなるし、泣かせたくなってしまう。
裏切られた事もムカついた。

だからって、あのキスはやり過ぎだった。

意外と根に持ちやすいあいつの性格を考えると、未だに恨んでるんだろうな。




『彰なんて大っ嫌い!』

もう6年くらい経つのに、まだあの時の遥の顔が脳裏にこびりついて離れない。
時々夢にまで出てきて、じっと俺にあの軽蔑の眼差しを送ってくるくらいに。

せめてもの償いで、あの日からあいつと関わらないようにして来たけど、あんな事さえしなければ、今でも日本に帰る度に会える仲だったのかな。

遥が崇ニィと関わると決まって……こう、胸の奥がむしゃくしゃしたんだよな。
我を失う感じで。

気持ちが沸騰するというか……耐えられなくて、遥をめちゃくちゃにいじめたくなるような。
かといってイジメた所でスッキリなんてしないんだとな……。


あー。
昔のことなのに思い出しただけなのに、ほらっ、めちゃくちゃイライラしてきた。

だいたい、俺が『崇ニィと関わるな』って言ってんのに、あいつ、全く守らないし勝手に会って……本当はあいつも悪いんだよ。
皆して俺を馬鹿にしやがって!

イライラする。

昔っからだけど、これは一体なんだんだろうか。
崇ニィへの対抗心?
それとも競争心?

でも、こんな気持ちになるのは遥に対してだけだし……。

「はー、最悪だな」

せっかく忘れかけてた訳のわかんねぇこの気持ち。
日本に帰ってきて早々に思い出させんなよ。


髪に手を差し入れて、セットされた髪を乱していると、遥らしき女が今にも倒れそうによろめいた。

「あっ!!」
思わず立ち上がってしまい、勢いよく車の天井に頭をぶつけてしまう。

「ってぇ!!」
頭を押さえると運転手の心配そうな声が耳に入った。
「だ、大丈夫でございますか?!」
「大丈夫だよ!ちょっと打っただけだ。いちいち煩せぇ」
そう言って目を戻すと、遥らしき女は普通に自転車を押していた。

何度も目をこする俺。

……あれ?おかしいな。
疲れてんのかな、俺。

「頭を打たれたんですか?」
「もういいから、早く進めよ」

そして、1秒でも早く俺の視界から消えてくれ。

後部座席のシート沿いに運転席の真後ろまで移動して運転席の後ろをガシガシと蹴りあげて八つ当たりする。
「早く行けよ!お前がちんたらしてるからだろうが!!」

「わわっ!お坊ちゃま!そんな事をされると危ないのでお止め下さい」
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