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一瞬の再会-東十条彰Side-
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しおりを挟む指定された空港の専用ターミナルに着くと、一年ぶりに見る日本側の世話係と運転手が頭を下げて来た。
「彰お坊ちゃま。長旅お疲れ様でした。また一段と大きくなられましたね。ついこの前14歳になられたんですよね」
「15だ。馬鹿が」
「大変申し訳ございません……。そういえば今回の帰国の時差ボケは大丈夫そうでございますか?」
そんな話をしながら東十条家のリムジンのドアを開ける。
「帰ってきてすぐにボケるかよ」
そう言って中に入ると脚を開いてドカッと座る。
「大変申し訳ございませんでした」
「でも疲れたから早く休ませろ」
「はい。かしこまりました。では早く自宅に戻れるようにさせて頂きますね」
頭を下げ、静かにドアが閉められる。
父さんの指示で俺はアメリカの中学に通っている。
帰国はだいたい年に1回。
向こうで年を明けて、年明けに毎年数日だけ崇ニィと一緒に帰国をしている。
そういう話しだったのに、今年は崇ニィと一緒じゃない。
理由は女。
日本に帰らないで、って女どもに引き止められたらしいけど……。
「心底、馬鹿らし……」
日本にいる時は告白されても彼女すら作らなかったのに、あっちに行った途端、目も当てられないくらいに女遊びをしている。
俺も遊んではいるけど、女なんてただの暇つぶしだろ?
何言う事ばっか聞いてんだよ。
まぁでも、俺もわざわざ日本に帰ってくる必要性も無いんだけど。
どうせ世界を飛び回る父さんも、自由気ままな母さんも、日本に帰って来なくてもあっちで時々会えるし。
逆に日本に帰ってきても会えるわけでもない。
……まぁ母さんは別として、父さんは会いたくないけど。
それに日本の友達は今ちょうど高校受験シーズンで根詰め時期だから遊べねぇだろうし。
「はー、帰ってきてもやる事ねぇな」
あ!
でもエスカレーター式だから関係ねぇかもな。
一応後で連絡してみるか。
そんな事を、ぼんやりと窓の外の懐かしい景色を見ながら考えていると、前方で大きなクラクションが鳴った。
「なんだ?どうした」
「なんでもございません。渋滞でご機嫌ななめな方が前方におられるようでして……」
そう言われて前を覗いてみると、渋滞で全く動いて無い。
「酷く混んでるな。全く動いてねぇじゃねぇか。ってかいつの間にか下道なんかに降りたんだよ」
「大変申し訳ございません。高速で事故があったようでして。渋滞を免れる為に下道に降りたのてすが下道も混んでおりまして……」
「はー最悪。こっちは疲れてんのに!」
舌打ちを打って頬杖をついて窓の外を見る。
すると、すぐ横の歩道に汚くて何10年乗ってんだ?って位にボロボロで壊れかけの自転車を押す女が俺の瞳に映った。
「すげー。あんな自転車乗れんの?」
見下したように暖房の効いたリムジンの中から搾りたてジュースを飲んで、ぽつりと呟く。
押してるのは多分同い年位の女。
顔は全く見えねぇけど、お世辞にも綺麗とは言えない格好をしている。
自転車を見るとタイヤはペチャンコ。
で、手で押しているという事は……普通に考えてパンクしたんだろう。
そんな古い自転車なんて乗ってるから。
さっさと新しいのを買い直せばいいのに。
そんな事だけ思って、興味が失せて目を逸らそうとした。
その時、
強い風が吹いてその女の長い前髪が靡くと、その女の顔が俺の視界に入って――
その瞬間、俺の時間が止まった。
そのせいで一瞬ジュースを零しかけたくらいだ。
「…………は?」
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