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遅すぎる自覚
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しおりを挟む「あぁ、そうだな。そんな事より、腕大丈夫か?」
そう言って、壊れ物を触るかのように手を掬《すく》った手を、思わず跳ねのけた。
「触らないで!私の腕なんか、どうでもいいでしょ?
それよりその婚約者さんの返事、早く返してあげなよ!返事待ってるんでしょ!」
返事なんて絶対にしてほしくないのに、この口はまた勝手な事を言う。
あぁ、駄目だ。
自分で言ってて、なんか泣いちゃいそう。
自分で跳ね返して、こんな事言って、自《みずか》ら自爆しそう。
でも、そうだよね。
婚約者くらいいるよね。
お相手は私と違ってやっぱり美人で家柄もいい人?
だめっ。
今そんな想像したら、本当に涙を我慢出来なくなる。
「……お前には関係無い」
「……関係、ないんだ。
そう……よね。
アキラに取っては私はただの犬なんだしね」
自分で言ってて虚しくて悲しくて、胸が張り裂けて……ついに涙が出る。
「何、泣いてんだよ」
「うっ……」
運転席から心配そうなアキラが覗き込んでくる。
雰囲気からして、どうして私が泣いている理由すら全く分かってないんだろう。
ずっとそばに居れるのなら犬のままでもいい、って思い始めていたけど……違うじゃん。
犬になっても、ずっと一緒になんて居れないじゃん。
日本経済を担う東十条ホールディングス。
そんな大企業の御曹司なんだから、婚約者がいるなんて全然有り得る話。
きっとお相手も、アキラの地位に申し分のない同レベルに凄い相手なんだろう。
……私と違って……。
「もう、犬、やめる!」
「は?また?なんだよ。止めるって言ったりそうじゃなかったり」
鬱陶しそうに前髪をグシャリと掴むと、もう片手でハンドルを叩いた。
「婚約者さんがいるなんて知らなかったからよ!なんで言ってくれなかったの?」
「それはっ……」
「婚約者さんを大事にしてあげなよ。婚約者さん以外の人と体の関係を持ってるなんて……婚約者さんが可哀想だよ?」
自分で言っててボロボロと涙をこぼした。
「それ、本気で言ってんのか?」
鋭い目が揺れて見えると、静かに呟いた。
「もう……あの写真、バラ撒きたいならバラ蒔いていいよ。それでアキラが気が済むのなら」
「お前、本当に俺があの写真をばら撒くとでも思ってんのか!?んなことするかよ!」
「……え?だって……いつもそれで脅して……」
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「本当にばら撒くわけねぇだろ!何だか知らねぇけど、お前はあの写真を人に見られたくないんんだろ?」
「う、うん……」
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