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遅すぎる自覚

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速足で進むその後ろ姿を追いかけ、開いたドアからエントランス、そしてロビーに入った。

足が速くて全然追いつかない。
「待って!」
そう言っても振り返りもしない。

思いっきり走ってアキラらしき人の横まで行って顔を確認する。
すると、すっと高い鼻の端正なアキラの横顔が見えた。

「アキラ、話があるの」

そう言ってもアキラは足を止めてくれない。
返事どころか、目すら合わしてくれない。

でも、負け時とアキラの前に回り込んで話かける。
「もういい!じゃあここで聞くから!ねぇ教えて欲しいの。私の学費を払ったのがアキラだって聞いたんだけど、それって本当?」
内容を出せば答えると思ったのに、それでも無視されてしまう。

答える事もなく足も止めないアキラは、空いたままのエレベーターに乗り込もうとしているようだった。

「待ってよ!答えてよ!」

その時、咄嗟とっさにアキラの腕を強引に引っ張った。


「離せ」
やっと反応してくれたと思ったら、腕を振り払われて突き放すような言葉を放たれる。

その氷のように冷たい言葉とトーンに、心が一瞬で泣きそうになった。

「この前、私が叩いた事を怒ってるの?それとも、関わらないでって言っておきながら……こうやってのこのこ会いに来てしまった事?」
そう言ってもそっぽ向くだけで、答える気が無いようだ。

「……分かった。理由はもう聞かない。でも、お金だけは返させてほしい」
「そんなのいらねぇ」

その言葉を聞くまで、アキラが学費を払ったなんてあり得なさ過ぎて半信半疑だったけど……本当だったんだ。

なんで学費が足りないって知ってたのか、なんでそんな事をしたのか、頭の中は疑問に埋め尽くされる。
でももう理由なんて聞かない。
答えたくはないんだろうから。

でも返済の話はさせてもらう。

と考えている隙に、彰は私を置いて無人のエレベーターに乗り込むから私もすかさず乗り込む。

「おい、ついてくんな」
「嫌よ」
アキラの言うことなんて無視して、同じエレベーターに乗り込んで閉まるボタンを連打する。


なのに、目の前で閉まりかけたドアはスッと開いた。

心当たりは後ろにいるアキラしかいない。
振り返るとやっぱり私の予想通り、アキラが開けるボタンを押すアキラがいて……

「何すんのよ」
「それはこっちのセリフだ。早く帰れ」

「だって、こうでもしないと話してくれないでしょ!?
要らないって何なの!?いるでしょ!?大金なんだから!!」
「いらねぇって」
そっぽ向いて迷惑極まりない顔をするアキラ。

「あんたにとって大した金額じゃ無かったとしても、恩を売られたままなのは嫌なの!」


なんか変だ。
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