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11年越しの告白
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しおりを挟むここは大学すぐ横のカフェで、使う人はだいたいがここの学生。
だからこうして同じ大学の人に会うなんて、当たり前のようにある事で……
だから、私の真後ろにある店内入り口へ続く通路に、アキラがたまたま通ってもなんら不思議ではない話。
……だけど。
でも、確率自体は絶対めちゃくちゃ低いのに、こんなの酷くない!?
神様、なんで私とアキラをバッティングさせてしまうの!?
「あ……」
一,二週間久しぶりに見るあの切れ長の目に、思わず小さな声が漏れた。
至近距離すぎて、目が合った瞬間、アキラの目が微かに見開いたのまで分かった。
きっと私も同じ風になっていたに違いない。
でも……
「どうしたの?知り合い?」
どこからか可愛い声が聞こえたと思うと、アキラの影から髪の長い美人な女性が出てきた。
その声に、アキラはハッとしたように私からその美人な女性に視線を移動させ、私に後頭部を見せる。
その事に胸がズキっと痛んだ。
アキラの代わりに、美人な女性がアキラから私に大きな瞳を向ける。
ツヤツヤの黒髪ロングヘアで、黒目がちな大きな瞳の女性。
いかにも男受けしそうな清楚で綺麗なタイプ。
スタイルも良くって、少し派手な私と違ってアキラと並ぶととてもお似合いに見えた。
もう関係ないのに、それが酷く悔しかった。
嫌そうな顔をして女の人に囲まれていたり、グループとかで一緒にいるのを見た事はあるけど、普通に女の人と2人でいる所なんて初めて見た。
まぁ、元々アキラとは科も違うし、建物も違う事が多いからそんなに見かける事もなかったけど。
「知り合いなんかじゃない。行こう」
それは、とても低く怒りを孕んだ声だった。
知り合い、じゃない……?
まるで赤の他人のような言い方に更に胸が苦しくなる。
「あれ。よく見たらあの人、ミスキャンパスの白藤さんじゃない?」
「どうでもいい。ゼミのレポートやるんだろ。ほら、あの奥が空いてる」
そう言ってその女性の手首を掴むと、私達の席と反対方向に向かっていく。
アキラの手が、私以外の女の人の手に触れている様子に、こんな場所なのに泣きそうになる。
「ふーん」
引っ張られる女性は、肉厚な唇をおちょぼ口にして人差し指を添えながら振り返り私をじっと見る。
バチっと目が合うと口角がグッと上がってアキラの腕に腕を回した。
「引っ付くな」
その時に思った。
自分は、本当にこんな状況にを望んだのか?と。
そんな風にアキラに触れないで欲しい。
私に背を向けないで欲しい。
振り向いてほしい。
その人じゃなくて自分だけを見て欲しい。
そんな、今まで思った事なんて無い、自分勝手な欲が次々と自分の中から溢れ出した。
駄目だ……。
このままここにいたら……。
そう思った時には、私はカフェを飛び出していた。
「遥!!」
そう叫ぶユイユイの声を無視して。
あの女の人は誰?
どうして二人でいるの?
あの女の人の前だから、私の事を他人みたいに言ったの?
それとも、もう関わらない相手だから?
どちらにせよ、二人で引っ付く後ろ姿が瞼に焼き付いて離れない。
アキラの隣に私以外の女の人がいるのが許せない。
嫌で嫌で……どうにかなってしまいそうだ。
でも、一番嫌なのは……
自分から突き放しておいて、勝手にめちゃくちゃ傷付いている、面倒くさ過ぎる自分。
無我夢中でヒールを鳴らしながら走っていると、地面にヒールが刺さってバランスを崩して膝をついた。
気付けば私は見慣れた大学の庭に足を踏み入れていたようだ。
地面はアスファルトでもレンガでもなくふわふわの土の上。
そらヒールだと走れない。
土だらけになった自分の足を眺めていると、背後から声がした。
「ちょっと、待ってって言ってるのに」
振り返ると息切れをしたユイユイがいた。
「ユイユイ……。どうしよう。
今更気付いても仕方ないのに……。私……思ってたより、アキラの事が好きみたい」
そう言って屈むユイユイに泣きながら縋《すが》り付いた。
「遥……」
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