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11年越しの告白

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「……好きだって言ったくせに」
独り言のように呟いたアキラのその言葉に驚き、すぐに否定する。

「え?私そんな事言ってない」
タカシお兄ちゃんへの気持ちは、アキラには絶対言って無い。
だって、タカシお兄ちゃんに近付くな関わるなって、あんなに釘刺されてたし、そうじゃなかったとしてもアキラには言える気がしない。

「あぁ、そうかよ!もういい!分かった!」
そんな私の返事に何故か激怒するアキラ。

「え、なにが?」
なんでそこで怒るの!?訳が分からない。

「お前の望み通り、もうお前には関わらない。それでいいんだろ!?」

そう捨て台詞《セリフ》を吐いてドアノブに手をかけたアキラは、背中越しに言う。

「あ、そうだ。犬、卒業おめでとう」

それは皮肉にしか聞こえなかった。
犬を辞めたかったはずなのに、突き放されたその言葉に、一瞬で心が氷のように冷えて固まった。

ドアの閉まる音と一緒に、私の視界から呆気あっけなく消えて行くアキラを抜け殻みたいになって見届けた。


タカシお兄ちゃんは、私の前にしゃがみこんで私の手を取って見上げる。
「遥ちゃんごめんね。あいつ、俺が思ってたより、まだまだ子供だったみたいだ」
そう、申し訳なさそうな顔でそう言った。

「い……いいえ。お陰で、アキラの本当の気持ちがハッキリ分かっ……」
そう話している最中に、頬に涙が流れた感覚が伝わって慌てて顔を両手で覆う。




泣いてる姿を見られたくなくて、、手で隠したまま、涙を飲むように何度も深呼吸をしてこれ以上涙が出ないようにこらえる。

すると、すぐ横のスプリングが沈んで、同時にきしむ音が聞こえた。

両手首を掴まれた感覚が伝わると、パッと目の前が明るくなって、月色に輝く揺れる髪が目に飛び込んで来た。
視線を下げると、ひざまずく真剣な表情のタカシお兄ちゃんが映り込む。

その顔はとても真剣そのもので、つい泣き顔になった顔を隠すという事も忘れてしまう。


「俺だと……駄目かな?」
「……え?」
「好きなんだ」

突然の告白に、一瞬お得意の冗談かと思ったけど……
流れる雰囲気からして、そんな風ではない事は一目瞭然いちもくりょうぜんで、思わず唾を飲む。


「本当は小学校の時からずっと気になっていた。
でも小学生の俺は、牽制《けんせい》してくる弟のあきらの事もあったし……なにより遥ちゃんは俺より3つも年下で、しかも卒業と共に海外に行くとが既に決まっていたから、だからせっかく告白してくれたのに……あの頃の俺は勇気が出せなかった」

え……。それって……。
その話が本当なら私たち、あのあの時は両思いだったってこと!?

「海外に行っても、遥ちゃんを振ってしまった事をずっと後悔していた。
そして、再会した瞬間に思ったんだ。
……やっぱり今でも好きなんだ、って」

真剣な眼差まなざしが私に突き刺さる。

「……好きだ。
俺と、付き合ってくれないか?」
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