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11年越しの告白

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そこにはお風呂上りなのか、白いガウンを着たタカシお兄ちゃんが立っていた。

「タカシお兄ちゃん……」

そう言った瞬間、雨に打たれてホテルのエレベーターホールで倒れたことを思い出した。


「そうだ、私、倒れて……」

そう呟きながら自分の頭に手を伸ばすと、ふわりとした袖が私の頬をかすめる。
タオル生地のような自分の袖口が視界に入れた後、タカシお兄ちゃんに視線を戻す。

そしてそっと自分の布団をめくった。

その瞬間固まった。

自分の姿は、どっからどう見ても、今のタカシお兄ちゃんと同じ姿だったからだ。


良からぬ想像が頭をめぐる。

口をパクパクさせた私を見たタカシお兄ちゃんは、クスっと笑って同じベットに腰掛けた。



「大丈夫だよ、着替えさせたのは女性の従業員だし、見てないから安心して」

「あっ、そう……なんですね」
本当は一瞬、もっと良からぬ事を想像したんだけど、それはタカシお兄ちゃんには絶対に言えない。

と思ってると、大きな手が私のおでこを包んだ。

ふわりと清潔感のある香水のような香りが鼻をかすめる。

「もう、熱は大丈夫そうだね」
切れ長の綺麗な目が私を見て優しく微笑ほほえんだ。
お風呂上りだからか、いつもの比じゃない位に大人の色気をかもし出している。

思わず自然現象で赤くなった私は、視線を下げる。

「あ……りがとうございます。そして色々と、迷惑かけてすみませんでした」

すると頭頂部に大きな手が乗せられ、そのまま後頭部に滑る。
そしてまた頭頂部に戻るとまたゆっくりと後頭部に滑っていく。

頭部に優しい温もりが伝わってくる。

「全然いいよ。それより良かったよ。一時はどうなるかと思うくらいに熱があったから」

「そうなんですね。本当にすみませんでした!」

「謝らないで。こんな事になったのは、どうせ彰が原因でしょ?」


その質問に驚いた私はタカシお兄ちゃんを見る。

「ねぇ、遥ちゃんは……彰の事が好きなの?」
「えっ……?」
そんな予想もしていなかった質問に、何も答えれずに動揺してしまう。

私の頬に伸びて来た手が、壊れ物でも扱うような程に優しい力でそっと私の顎を持ち上げた。

優しく微笑むタカシお兄ちゃんは、視線が絡むと一変して苦しそうな表情に変化した。

すぐに抱き寄せられて、その顔が見えなくなった代わりに頭上から大きなため息が降って来る。

「……彰より早ければよかったのかな……」
タカシお兄ちゃんは消え入りそうな声で呟く。

「何が……ですか?」

その時、部屋にチャイムが鳴り響いた。




その音に、私もタカシお兄ちゃんも同時にドアの方を向く。

「はー。さすが早いね」
タカシお兄ちゃんは、チャイムを押した相手が分かっているのか、そんな事を呟いた。
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