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11年越しの告白

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インスタントだから愛が無いってわけじゃない。

でもなんだろう……。

考えれば分かるのに、一瞬、私のために手作りでお粥を作って来てくれるんだって、喜んでしまって……
いや、『私のために作ってくれた』のは合ってたんだけど。

……機敏になりすぎなのかな。

またこんな事で逐一ちくいち傷ついて悲しんでしまう。


「はぁー。こんな年になってまでお母さんの愛が欲しいなんて、おかしいよね。一体、何歳なんだよ、って感じだよね」


そんな事、分かってるのに……。



人は……
どんな態度だと愛がないと感じて、どんな態度だと愛だと感じるんだろうか。

愛していると言えばそれが愛があるという証拠になるんだろうか。
答えはNOだろう。

私はどうしてこんな不確かで答えの見つからない事を求めて、何年も苦しんでいるんだろう。

そしていつになったらこの心の穴は塞がるんだろうか。


お母さんにとって、一番の理解者で一番頼りになって、一番手のかからない子になれるように努力しているのに、


……向けてくれない愛情。



胸が詰まる思いでお粥を食べると、幾分か気持ちが落ち着いたのが自分でも分かった。

「……空腹は心がナイーブになるから駄目だな……」


空になった発泡スチロールの器をベットサイドに置いて倒れ込むように横になる。

そして何気なくスマホを手に取ってロック画面を解除すると、まだ閉じていなかったタカシお兄ちゃんからのメッセージがあった。


「何かあったりしないの……か。
これって、大あり過ぎるよね。……私、どうしたらいいんだろう」

静かになった自分の部屋で、数時間前の出来事を思い出す――




眠りから覚めてまぶたを開けると、月明かりだけが照らす豪華で見たことの無い部屋は、まるでホテルのスイートのよう。

何故か私はそんな豪華すぎる部屋のベットで横になっていたようだ。

体を起こして初めて、何時いつもよりも重い体に気付く。

「うっ⋯⋯」

クラつく頭に手を当て、どうして自分がこんな所にいるのかを思い出そうとする。
でも思い出すより先に、ドアの開く音がした。
私はその方向に顔を向けると、部屋の隅まで照らしそうな程に眩しい光が私を照らした。

その明るさに顔をしかめ、手で日差しを作って目を凝らす。
すると、軽快な声が飛び込んできた。


「起きたの?よく寝たね」

その声の主の姿は強い逆光のせいで誰なのかは分からない。

「あっ、ごめんね。眩しかったね」

そう聞こえた直後、ドアの閉まる音と同時に部屋の明かりは月の明るさだけに戻った。

光で眩んだ目はしばらくチカチカしていたけど、徐々じょじょに慣れてくるのと同時に、月明りに照らされた人物がゆっくりと浮き彫りになっていく。
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