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この想いの正体
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しおりを挟む「ねぇ……彰」
「なんだよ」
「どうして遊園地なの!?」
「うるせぇな!理由なんてどうでもいいだろ。行くぞ」
「しかも貸し切りってなんなの!?遊園地ってそんな事出来るの?」
「馬鹿だなぁ、そんな事も知らないのかよ。お子ちゃまだな」
馬鹿にされてムッとしてしまう。
彰はこんなところに連れてきて、一体何を企んでいるの?
私がお化け屋敷が苦手なのを知っていて、無理やり連れ入って嫌がらせをするつもり?
それとも虫パラダイスがあるとか?
そんなゾッとするような事を想像して、怖気付いて入口ゲート前で立ち止まった。
そんな私に気付いた彰は、一足先にゲートをくぐったのにズンズンと足音を立ててこちらに戻ってくる。
「おい、ノロマ遥!早く行くぞ!」
そう言うと、俯いて眉を寄せている私の手を取った。
その瞬間、嫌なのに変にドキドキしだす自分の鼓動。
手、握られてる。
こんな事されたら、また変に意識してしまう。
そんな自分を否定したくて思いっきり頭を振った。
ドキドキさせられて困ってる私を他所に、彰はそんな事なんてなんとも思っていないような顔をして遊園地の中に私を連れ入る。
一体、中にはなんの試練が待ち受けているんだろうか。
想像するだけで滅入ってしまうような事を思い浮かべていると、可愛いクマさん達が出迎えてくれた。
「どうぞ~」
そう言って手渡されたのはキラキラと光るハートの風船。
そんな些細な事に、一瞬でテンションが上がってしまう私。
「わぁ、可愛い。ありがとう」
でも上がったテンションも直ぐに叩き落とされる。
彰が「ガキかよ」と、ポケットに手を突っ込んで私を馬鹿にしてきたからだ。
やっぱり嫌い!
遊園地なのに彰と一緒だと全然楽しくない!
どうせ遊園地に来るなら家族と来たかった。
そう思って口を膨らませていたのに――
「キャーーーー!!」
一緒にジェットコースターに乗ったり、コーヒーカップでどっちが早く回せるかと競い合って目が回ったり、
何なに!?めちゃくちゃ楽しい!!
「彰!次あっちいこ!」
「おい。ちょっと、飛ばしすぎだろ」
最初は何するにも警戒心が邪魔をしていたけど、彰が純粋に遊園地を楽しんでいるだけだと知ると、急に楽しくて仕方なくなった。
家族で来るより全然楽しい!
まだ幼稚舎の弟は怖がりでビビりで、お母さんとゆったりとした乗り物しか乗らない。
お父さんは乗り物酔いが酷く、一緒に乗ってくれない。
だから家族で来ても、いつも一人だったから。
楽しくて、気付けば当たり前みたいに自分から彰に手を繋いで、次のアトラクションまで引っ張っていた。
彰に対する怯えとか、そういう気持ちが不思議とどこかに飛んで行っていた。
学校での彰は気難しい。
急に機嫌が悪くなるから。
「彰、次あれ乗ろう!」
なのに今日の彰は、愛想は無いものの、いきなり怒ったりもしない。
……ずっと、こんな彰でいてくれたらいいのに。
「はぁ~さすがに疲れたから、一回休む」
そんな事を言う彰に、不満で口を膨らます。
「えー」
「もう夕方だぜ?さすがに、ここまで休憩無しとか疲れるわ。行きたいなら俺は休んでるから、お前行ってこいよ」
「やだ!彰と一緒がいい!」
そう言うと、一瞬驚いた顔をしてから自分の頬を人差し指で掻いた。
そしてどこか機嫌の良さそうな目をして、私をじっと見て来た。
「え……なに?」
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