上 下
112 / 337
この想いの正体

12

しおりを挟む
無表情の彰は私の足をジッと見ると、目を細めて言われなくても分かってる事を言う。

「運動音痴」

彰はまだ体育中なのに、わざわざ授業を抜け出して私に文句を言いに来たようだ。

きっと運動会が来週に迫っているのに、私がクラスの足を引っ張り続けているのがよっぽど気に食わないんだろう。


「……ごめんなさい」
体を起こそうとすると、伸びてきた彰の手が私の肩に置かれる。

何をしているのかと思うと、そのままググッと背面方向に圧力をかけられ、その力に逆らえない私は再びベットにもたれてしまう。

「な、何?」
肩に手を置いたまま、上半身だけ私に覆い被さる彰を見上げると、その近さに勝手に心臓が早まってくる。

こんなタイミングで思い出しちゃダメなのに、普段は絶対に無い至近距離に嫌でも思い出してしまう。
あの手洗い場で抱きしめられた事を……。


意識しそうになってギュッと目をつむると、不機嫌な声が落ちてくる。

「馬鹿かよ。起き上がるな」


その声にそっと目を開けると、目の前にはムッとした顔の彰がいた。

「え、でも……」
足首捻あしくびひねってんだろ?大人しくしとけ」
「う、うん……」
やっぱり、彰って何考えてるのか分からない。

「お前、また足引っ張ってるとか責任感でも感じてるだろ」
「え?どうして、分かったの?」
たまに思う。彰はエスパーかと。
私は彰の考えている事が全然分からないのに、彰は私の事をよく分かってる気がするのは気のせいなのか。

「んな事くらい分かる。ほんと、つまらない事に頭使いやがって」

「だって……足を引っ張ってるのはホントだし。私がいるせいで優勝出来なかったらどうしようとか毎日考えて、帰ってからも走る練習をしてるのに……全然で……」

話してる最中に彰の手がひたいに伸びてくると、パチンという音と共におでこに痛みが走る。

「……痛っ!」

馬鹿遥ばかはるか。うちのクラスには僕が居るだろう。遥1人が足引っ張ったところで、どうにでもなる」
「そんなの……分からないでしょ」

「僕を誰だと思ってんだ。もう少し気楽にいけ」
「気楽にって……」
そんなの出来るならやってるよ、とおでこに手を当てながら思う。

「そんな事より、お前は早くその足を治して、あのへっぽこな走りをみんなに見せつけてやれ」

「へ、へっぽこじゃないもん!」

「へぇ。じゃあ、運動会の時はへっぽこじゃねぇ走りを見せてくれるんだな。
期待しといてやるよ」
そう言うと顎を上げてニヤリと笑う。

「でも、もしへっぽこだったら……1日、何でも僕の言う事を聞けよ」
「…………え?そんな」
そう言われて、うろたえてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...