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この想いの正体

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無表情の彰は私の足をジッと見ると、目を細めて言われなくても分かってる事を言う。

「運動音痴」

彰はまだ体育中なのに、わざわざ授業を抜け出して私に文句を言いに来たようだ。

きっと運動会が来週に迫っているのに、私がクラスの足を引っ張り続けているのがよっぽど気に食わないんだろう。


「……ごめんなさい」
体を起こそうとすると、伸びてきた彰の手が私の肩に置かれる。

何をしているのかと思うと、そのままググッと背面方向に圧力をかけられ、その力に逆らえない私は再びベットにもたれてしまう。

「な、何?」
肩に手を置いたまま、上半身だけ私に覆い被さる彰を見上げると、その近さに勝手に心臓が早まってくる。

こんなタイミングで思い出しちゃダメなのに、普段は絶対に無い至近距離に嫌でも思い出してしまう。
あの手洗い場で抱きしめられた事を……。


意識しそうになってギュッと目をつむると、不機嫌な声が落ちてくる。

「馬鹿かよ。起き上がるな」


その声にそっと目を開けると、目の前にはムッとした顔の彰がいた。

「え、でも……」
足首捻あしくびひねってんだろ?大人しくしとけ」
「う、うん……」
やっぱり、彰って何考えてるのか分からない。

「お前、また足引っ張ってるとか責任感でも感じてるだろ」
「え?どうして、分かったの?」
たまに思う。彰はエスパーかと。
私は彰の考えている事が全然分からないのに、彰は私の事をよく分かってる気がするのは気のせいなのか。

「んな事くらい分かる。ほんと、つまらない事に頭使いやがって」

「だって……足を引っ張ってるのはホントだし。私がいるせいで優勝出来なかったらどうしようとか毎日考えて、帰ってからも走る練習をしてるのに……全然で……」

話してる最中に彰の手がひたいに伸びてくると、パチンという音と共におでこに痛みが走る。

「……痛っ!」

馬鹿遥ばかはるか。うちのクラスには僕が居るだろう。遥1人が足引っ張ったところで、どうにでもなる」
「そんなの……分からないでしょ」

「僕を誰だと思ってんだ。もう少し気楽にいけ」
「気楽にって……」
そんなの出来るならやってるよ、とおでこに手を当てながら思う。

「そんな事より、お前は早くその足を治して、あのへっぽこな走りをみんなに見せつけてやれ」

「へ、へっぽこじゃないもん!」

「へぇ。じゃあ、運動会の時はへっぽこじゃねぇ走りを見せてくれるんだな。
期待しといてやるよ」
そう言うと顎を上げてニヤリと笑う。

「でも、もしへっぽこだったら……1日、何でも僕の言う事を聞けよ」
「…………え?そんな」
そう言われて、うろたえてしまう。
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