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分からない気持ち

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「メッセージで言ってた私が欲しいバック、マサ君買ってくれるんでしょ?そんな優しくて素敵な所も大好き」

「いやぁ~」
照れて後頭部を掻く。

嘘を付いて『男』をコマにする。
馬鹿な男からどんどんお金を搾り取る。

そうすれば、きっと報われる。
男のせいで台無しになった、私の人生が。

……ねぇ、そうでしょ?
そうだよね?


なのに、どうして私がこんなに罪悪感を感じないといけないの?
悪いのは『男』なのに。

…………

……

「あぁー、早く帰らせてよ。アフターってこんなにつらいの?」
ゲッソリとしたトイレの鏡に映る自分を見ながらため息を付く。


マサ君と店を出た後、初めてのアフターで深夜まで開いている小洒落こじゃれた創作料理屋に入ったけど……時間が超長く感じる!!

長すぎて、つい化粧直しという事でトイレに逃げて来てしまったけど、流石さすがにそろそろ戻らないといけないよね。

「いつもなら指名被りで、同じ人にはずーっと付かないもんな。あぁー同じ客とずっと会話するのってこんなに疲れるんだな~」
と呟くとスマホが鳴った。

画面には
『究極のゴミ屑さんからメッセージが届いてます』と表示されている。


そういえばあれから、1度もアキラとは会っていないな、なんて考えながらメッセージを開封する。

『もう帰った?』
スタンプも無いし、相変わらず愛想の無いメッセージなのに何故かそれを見た瞬間、頬が緩むのを感じた。

たった一言のメッセージで、この空間にいきなり癒し空気がが現れるのを感じた。

『まだ』
負け時と愛想の無いメッセージで返すと、またすぐに返ってくる返事。
すぐに返ってくる、というそんな些細ささいな事でも、何故か嬉しくてニヤけてしまう私。

大っ嫌いなのに、どうかしてる。

『近くにいるから送ってってやる』
え?近くにいるの?
でも帰りたいのは山々だけど、でもまだ帰れなさそうだし……。

『まだ仕事中』
『日付変わってるだろ』

さすが首席入学者。
金曜日以外は終電までだって言ったこと、覚えてるんだ。


『今アフター中だから』
そう送信した直後、鳴り響く電話音に驚く。




出たら面倒な事になりそうな予感がして、サッとマナーモードに切り替えてバックにしまうと、急に湧き上がる謎の罪悪感。

でもまぁ、気付かなかったって事にすればいいでしょ。
そんな事も、本当にたまにあるし。

そう言い聞かせて客席に戻ると、少し残っていた食事も下げられていた。
「あれ?残ってたものは?」
「下げてもらったよ。あと会計も済んでるから」
その言葉に心の中でガッツポーズをすると、ワントーン高い声で可愛くお礼を言う。

「マサ君、ご馳走様でした。そして今日は素敵なバックまでありがとうございました。絶対大事に使いますね」
高級感ある紙バックに手を置いて、上目遣いをして軽く首も傾げる。
これでバッチリ。

「いいよ、HARUちゃんが欲しかった物でしょ?それとこうやって外でご飯が食べれて夢みたいだったよ。またしてくれる?」
デレた顔をする馬鹿な客に。

「うん、考えとくー」
もう絶対アフターなんてしないし、バックも明日の午前中にはお金に変わりますけどね。

「嬉しいな。次はどこに連れて行ってあげようかな~?考えとくね。最後にお茶だけ飲んだら出よう。店主が言ってたけど、珍しいお茶らしいよ」
「そうなんですね」
そう言って目の前にある温かいお茶をひと口飲むと、変な味がした。

匂いも変だし一瞬残そうかと思ったけど、目の前のマサ君がニコニコした顔で見てる来るから最後だと思って頑張って飲みきった。

「美味しかったです。ご馳走様でした」
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