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遥の過去
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「え!?」
思わず出てしまった声に、慌てて両手で口を塞ぐ。
よく分からないけど、物凄く聞いてはイケナイもの聞いてしまった気がしてならない。
聞き間違い?じゃないよね?
今、絶対に東十条くん……って言ったよね。
信じられない気持ちで、もう一度上を見上げる。
けど、ここからだと真っ暗で階段の壁しか見えない。
今この上に崇お兄ちゃんがいるの?
女の子の声だったけど、女の子といるの?
もし、そうだったとしてこんな真っ暗な所で何を⋯⋯?
そんな事を思っていた時、
「そろそろチャイム鳴るから、いつも通り先に降りるね」
と女の子の声が聞こえる。
直後、その声の主が降りて来る。
髪が長くて、めちゃくちゃ綺麗で、私と違って大人っぽい女の子だった。
数段降りてくると、階段の途中に座っていた私とバッチリと目が合ってしまう。
「あっ……」
オドオドした私と違って、その女の子は少し照れたような顔でニコリと微笑むと、私の横を通って長い髪を揺らしながら降りて行く。
その仕草はとても余裕があった。
私とは違って胸の膨らみまであった。
その女子が曲がり角を曲がって見えなくなった時、頭上から声がした。
「あれ?遥ちゃん。どうしたの?こんな所で」
見上げると、あの大好きな崇お兄ちゃんが私を見下ろしていた。
私の心は複雑だった。
聞き間違いであってほしかった。
こんな所であんな綺麗な人と何をしてたの?
あの人は崇お兄ちゃんの彼女なの?
知りたいけど聞きたくないような疑問が次々と頭に浮かんでくる。
それと同時に、今さっき彰にファーストキスを奪われた事の悲しみが湧き上がってくる。
だから普段なら会えただけでシッポを振って喜んでいるのに、今は全く喜べない。
眉を寄せてポツリと言う。
「ちょっと……1人になりたくて」
「へぇ、遥ちゃんもそんな時があるんだね」
「え?崇お兄ちゃんもですか?」
意外だ。
「あぁ、僕はしょっちゅうだよ」
前に、秘密の場所で聞かせてくれた、跡継ぎの事でまだ悩んでいるのかな?
お金持ちで権力があっても、それはそれで悩み事があるのかもしれない。
「あれ……泣いてたの?」
「えっ……違うんです」
頬に当てた手が濡れて慌てて袖口で拭っていると、崇お兄ちゃんは私の横に腰を下ろした。
「僕でよかったら話を聞こうか?」
その言葉に大きく首を振る。
言えるわけがない。
せっかくプレゼントしてくれた鉛筆を折られた挙句、彰にキスされたなんて。
「僕だと言えない?」
そう言うと崇お兄ちゃんは私の耳下の髪に手を差し入れてくる。
驚いていると、その袖口からはフワリと女の子向きのような甘い香りがした。
さっきの綺麗な女の子の香りが移ったのかな?とか、
そんなに接近して何をしてたんだろう?とか、
崇お兄ちゃんはあの女の子が好きなのかな?とか……
一瞬で湧いて来た思いも、息もかかりそうな程の至近距離で覗き込まれて吹っ飛んでいきそうになる。
「そんな悲しいを顔していたら、僕、放っておけないんだけど」
思わず出てしまった声に、慌てて両手で口を塞ぐ。
よく分からないけど、物凄く聞いてはイケナイもの聞いてしまった気がしてならない。
聞き間違い?じゃないよね?
今、絶対に東十条くん……って言ったよね。
信じられない気持ちで、もう一度上を見上げる。
けど、ここからだと真っ暗で階段の壁しか見えない。
今この上に崇お兄ちゃんがいるの?
女の子の声だったけど、女の子といるの?
もし、そうだったとしてこんな真っ暗な所で何を⋯⋯?
そんな事を思っていた時、
「そろそろチャイム鳴るから、いつも通り先に降りるね」
と女の子の声が聞こえる。
直後、その声の主が降りて来る。
髪が長くて、めちゃくちゃ綺麗で、私と違って大人っぽい女の子だった。
数段降りてくると、階段の途中に座っていた私とバッチリと目が合ってしまう。
「あっ……」
オドオドした私と違って、その女の子は少し照れたような顔でニコリと微笑むと、私の横を通って長い髪を揺らしながら降りて行く。
その仕草はとても余裕があった。
私とは違って胸の膨らみまであった。
その女子が曲がり角を曲がって見えなくなった時、頭上から声がした。
「あれ?遥ちゃん。どうしたの?こんな所で」
見上げると、あの大好きな崇お兄ちゃんが私を見下ろしていた。
私の心は複雑だった。
聞き間違いであってほしかった。
こんな所であんな綺麗な人と何をしてたの?
あの人は崇お兄ちゃんの彼女なの?
知りたいけど聞きたくないような疑問が次々と頭に浮かんでくる。
それと同時に、今さっき彰にファーストキスを奪われた事の悲しみが湧き上がってくる。
だから普段なら会えただけでシッポを振って喜んでいるのに、今は全く喜べない。
眉を寄せてポツリと言う。
「ちょっと……1人になりたくて」
「へぇ、遥ちゃんもそんな時があるんだね」
「え?崇お兄ちゃんもですか?」
意外だ。
「あぁ、僕はしょっちゅうだよ」
前に、秘密の場所で聞かせてくれた、跡継ぎの事でまだ悩んでいるのかな?
お金持ちで権力があっても、それはそれで悩み事があるのかもしれない。
「あれ……泣いてたの?」
「えっ……違うんです」
頬に当てた手が濡れて慌てて袖口で拭っていると、崇お兄ちゃんは私の横に腰を下ろした。
「僕でよかったら話を聞こうか?」
その言葉に大きく首を振る。
言えるわけがない。
せっかくプレゼントしてくれた鉛筆を折られた挙句、彰にキスされたなんて。
「僕だと言えない?」
そう言うと崇お兄ちゃんは私の耳下の髪に手を差し入れてくる。
驚いていると、その袖口からはフワリと女の子向きのような甘い香りがした。
さっきの綺麗な女の子の香りが移ったのかな?とか、
そんなに接近して何をしてたんだろう?とか、
崇お兄ちゃんはあの女の子が好きなのかな?とか……
一瞬で湧いて来た思いも、息もかかりそうな程の至近距離で覗き込まれて吹っ飛んでいきそうになる。
「そんな悲しいを顔していたら、僕、放っておけないんだけど」
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