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遥の過去
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「僕は東十条崇。彰の兄です」
彰に少し似たその人は微笑みながらそう言った。
彰の兄⋯⋯
確かに目の前にいる初恋の人はそう言った。
初恋の人が、世界一苦手な彰のお兄さん!?
「えっ……」
あまりの事実に、私はハンマーで頭を殴られたようなショックを受けた。
確かに考えれば分かったかもしれない。いや、分からない方がおかしかったのかも。
あの誰も逆らえない彰を引っぱたいて、同じ車に乗ってるんだもの。
目元や鼻あたりも、よく見れば似てる気がする。
でも雰囲気は全く違うけど。
動物に例えるなら彰がクロヒョウ、お兄さんはもふもふのヒツジさんと言うところだろうか。
「どうぞ、白藤お嬢様」
ショックを受けている中、運転手さんにそう声を掛けられ長い車を降りると、端から端まで視界いっぱいに映る東十条家の豪邸。
何度来ても圧倒される。
もうここは『家』というより『城』という言葉の方がピッタリのこの建物は、いつ見ても凄い。
100人以上が余裕で住めそうな程の大きさなのに、外観から中の細かいインテリアまで、全てが豪華で煌びやかで毎回息を飲む。
私の家もお金持ちに入る。
近所の人からは『凄く大きい家だね』と、もてはやされるのに……彰の家に来た後に見る自分の家はただの小屋にしか見えない。
彰の家に来ると、本当に自分の家との差を嫌でも感じさせられる。
「おい!見上げてないで、さっさと行くぞ」
そう無愛想に言われて、心の中でムッとする。
誰のせいで怪我したと思ってんのよ!かすり傷だけど。
そんな時、彰と話す彰のお兄さんが目に入って心が浄化されていく。
はー、後ろ姿まで素敵。
「どうだった?」
手当をしてもらった小部屋から出ると、待ってくれていた彰のお兄さんが声をかけてくる。
この談話室のような部屋は、ヨーロッパを思わせる重厚感のある家具が沢山あって、その椅子に座るお兄さんはとても絵になっていた。
絵になるお兄さんは、メイドのような恰好をした人からお茶を入れてもらっているところようだ。
「あ、やっぱり全然大丈夫でした。ここまでして頂きありがとうございました」
そう言って深々とお辞儀をする。
本当に、手の平をただ擦りむいただけだったのに。
なんて優しい人。
兄弟なのに、彰とは大違い。
見渡すと、この怪我を作った原因の彰は居ない。
「大丈夫そうでよかった。白藤さん可愛いから傷でも残ったらどうしようかと思ったよ」
ニコリとしながらサラッと言った『可愛い』という言葉に、顔に火を付けられる。
「か、か、かわっ」
可愛い!?
そんな言葉は普段から耳にタコが出来るほど聞き慣れているはずなのに、彰のお兄さんに言われると、私は挙動不審になって一瞬でリンゴのような顔になる。
その時ーー
「キモっ」と彰の声がどこからか入ってくる。
彰に少し似たその人は微笑みながらそう言った。
彰の兄⋯⋯
確かに目の前にいる初恋の人はそう言った。
初恋の人が、世界一苦手な彰のお兄さん!?
「えっ……」
あまりの事実に、私はハンマーで頭を殴られたようなショックを受けた。
確かに考えれば分かったかもしれない。いや、分からない方がおかしかったのかも。
あの誰も逆らえない彰を引っぱたいて、同じ車に乗ってるんだもの。
目元や鼻あたりも、よく見れば似てる気がする。
でも雰囲気は全く違うけど。
動物に例えるなら彰がクロヒョウ、お兄さんはもふもふのヒツジさんと言うところだろうか。
「どうぞ、白藤お嬢様」
ショックを受けている中、運転手さんにそう声を掛けられ長い車を降りると、端から端まで視界いっぱいに映る東十条家の豪邸。
何度来ても圧倒される。
もうここは『家』というより『城』という言葉の方がピッタリのこの建物は、いつ見ても凄い。
100人以上が余裕で住めそうな程の大きさなのに、外観から中の細かいインテリアまで、全てが豪華で煌びやかで毎回息を飲む。
私の家もお金持ちに入る。
近所の人からは『凄く大きい家だね』と、もてはやされるのに……彰の家に来た後に見る自分の家はただの小屋にしか見えない。
彰の家に来ると、本当に自分の家との差を嫌でも感じさせられる。
「おい!見上げてないで、さっさと行くぞ」
そう無愛想に言われて、心の中でムッとする。
誰のせいで怪我したと思ってんのよ!かすり傷だけど。
そんな時、彰と話す彰のお兄さんが目に入って心が浄化されていく。
はー、後ろ姿まで素敵。
「どうだった?」
手当をしてもらった小部屋から出ると、待ってくれていた彰のお兄さんが声をかけてくる。
この談話室のような部屋は、ヨーロッパを思わせる重厚感のある家具が沢山あって、その椅子に座るお兄さんはとても絵になっていた。
絵になるお兄さんは、メイドのような恰好をした人からお茶を入れてもらっているところようだ。
「あ、やっぱり全然大丈夫でした。ここまでして頂きありがとうございました」
そう言って深々とお辞儀をする。
本当に、手の平をただ擦りむいただけだったのに。
なんて優しい人。
兄弟なのに、彰とは大違い。
見渡すと、この怪我を作った原因の彰は居ない。
「大丈夫そうでよかった。白藤さん可愛いから傷でも残ったらどうしようかと思ったよ」
ニコリとしながらサラッと言った『可愛い』という言葉に、顔に火を付けられる。
「か、か、かわっ」
可愛い!?
そんな言葉は普段から耳にタコが出来るほど聞き慣れているはずなのに、彰のお兄さんに言われると、私は挙動不審になって一瞬でリンゴのような顔になる。
その時ーー
「キモっ」と彰の声がどこからか入ってくる。
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