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遥の過去
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翌日、佐藤くんに会ったらどんな顔をすればいいのかと、何度も色々なパターンを脳内シュミレーションしてから登校した。
でも教室のドアを開けると、そこには佐藤くんの姿は無かった。
遅刻や欠席なんてしないタイプなのに珍しいと思っていたら、ホームルームで担任の先生が言った。
「急ですが、佐藤くんは転校する事になりました」と。
驚き過ぎて、その後色々話していたはずなのに、先生の言葉が全く頭に入ってこなかった。
ホームルーム後の休憩時間に「親の都合ってなんだろうね」と、そんな話題で持ち切りで自然と聞き逃してしまった転校理由を知るも、こんなタイミングで転校なんて偶然にしては出来過ぎていると思った。
でも、こんな事もあるんだな。って、佐藤くんには悪いけど正直助かったと思ってしまった。
そして、この日から数日後……
私は、初めて恋に落ちる事となった。
それはいつも通り、学校の門前で迎えの車を待っている時だったーー
仲のいい友達は次々にお迎えが来て、最後は私だけとなった。
いつもならそんな事は全く気にもしないのに、今日だけは違った。
認めたくはないけど、私はあの日から彰をかなり意識してしまっている。
『意識』という言葉の意味は色々あるけど、それは当然、男の子としての意識だ。
だから困っている。
ちなみに『好き』とか、そういうのでは無い。と、思いたい。
昔から意地悪ばかりしてくる彰が優しく見えた。
ただそれだけなのに……
あの時の手の温もりと、どこか優しく見えたあの目が忘れられない。
思い出すだけで胸が熱くなってしまう。
こんなのが彰にバレたら、絶対もっと意地悪されてしまうと思う。
だから前より、もっともーっと関わらないように必死で彰を避けてきたのに⋯⋯。
他の学年の生徒の迎えも途絶えて来て、門前の人も随分減ってきた。
そしてついに、同学年で迎えを待っているのは私と彰だけになってしまった。
「最悪……」
最初っから彰から1番離れた門の端にいたからか、幸いな事に、まだ彰は私に気付いていない。
「今の間にもっと離れておこう」
そう呟きながら、更に離れた木の陰に来てから空を見上げて大きなため息をつく。
「まだなのぉ~早くして」
すると
「やっぱダセー。お前センスなさすぎだろ」
すぐ後ろから声がして振り返ると、そこには避けに避け続けていた彰がいた。
「ひあぁっ!あ、彰!?」
私は目をまんまるくして小さく飛び跳ねると、裏返った声が出てしまう。
そして一気に体温が上がった感じがした。
「なんだ、変な声出して」
普段しない私の反応に、少し驚いたような顔を見せた彰。
そんな彰の手には、何故か私のお気に入りのペンケースがあった。
でも教室のドアを開けると、そこには佐藤くんの姿は無かった。
遅刻や欠席なんてしないタイプなのに珍しいと思っていたら、ホームルームで担任の先生が言った。
「急ですが、佐藤くんは転校する事になりました」と。
驚き過ぎて、その後色々話していたはずなのに、先生の言葉が全く頭に入ってこなかった。
ホームルーム後の休憩時間に「親の都合ってなんだろうね」と、そんな話題で持ち切りで自然と聞き逃してしまった転校理由を知るも、こんなタイミングで転校なんて偶然にしては出来過ぎていると思った。
でも、こんな事もあるんだな。って、佐藤くんには悪いけど正直助かったと思ってしまった。
そして、この日から数日後……
私は、初めて恋に落ちる事となった。
それはいつも通り、学校の門前で迎えの車を待っている時だったーー
仲のいい友達は次々にお迎えが来て、最後は私だけとなった。
いつもならそんな事は全く気にもしないのに、今日だけは違った。
認めたくはないけど、私はあの日から彰をかなり意識してしまっている。
『意識』という言葉の意味は色々あるけど、それは当然、男の子としての意識だ。
だから困っている。
ちなみに『好き』とか、そういうのでは無い。と、思いたい。
昔から意地悪ばかりしてくる彰が優しく見えた。
ただそれだけなのに……
あの時の手の温もりと、どこか優しく見えたあの目が忘れられない。
思い出すだけで胸が熱くなってしまう。
こんなのが彰にバレたら、絶対もっと意地悪されてしまうと思う。
だから前より、もっともーっと関わらないように必死で彰を避けてきたのに⋯⋯。
他の学年の生徒の迎えも途絶えて来て、門前の人も随分減ってきた。
そしてついに、同学年で迎えを待っているのは私と彰だけになってしまった。
「最悪……」
最初っから彰から1番離れた門の端にいたからか、幸いな事に、まだ彰は私に気付いていない。
「今の間にもっと離れておこう」
そう呟きながら、更に離れた木の陰に来てから空を見上げて大きなため息をつく。
「まだなのぉ~早くして」
すると
「やっぱダセー。お前センスなさすぎだろ」
すぐ後ろから声がして振り返ると、そこには避けに避け続けていた彰がいた。
「ひあぁっ!あ、彰!?」
私は目をまんまるくして小さく飛び跳ねると、裏返った声が出てしまう。
そして一気に体温が上がった感じがした。
「なんだ、変な声出して」
普段しない私の反応に、少し驚いたような顔を見せた彰。
そんな彰の手には、何故か私のお気に入りのペンケースがあった。
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